工業化学雑誌
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液状不飽和ポリエステル樹脂の硬化反応に対する酸素の影響
田中 久雄
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1961 年 64 巻 2 号 p. 396-398

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抄録

液状不飽和ポリエステル樹脂は酸素の影響を受けると樹脂のゲル化時間が長くなるばかりでなく,はなはだしい場合にはかたまらなくなる。そこで種々の条件のもとに樹脂を保存し,経日とともに変動する樹脂のゲル化時間を測定して,樹脂の硬化反応に対する酸素の作用を考察した。空気と接触する状態に保存した樹脂は数日後にかたまらなくなったが,密封あるいは不活性気体雰囲気中においたもののゲル化時間は変動しなかった。空気中に保存したため著しくゲル化しにくくなった樹脂について不活性気体の吹き込みや減圧脱気などのあと処理を行なうと,初期のゲル化時間に回復させることができた。室温でかたまらない樹脂でも高温では十分に硬化した。これらの結果から,分子状に溶解した酸素だけが樹脂のデル化時間を長くさせ,開始剤により活性化されたモノマーラジカルは容易に溶存酸素と共重合して安定化され,過酸化ポリマーは生成されにくいと思われる。ここに生成した過酸化モノマーは高温では開始剤としての機能があるが,低温ではコバルトイオンで分解されない。

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