工業化学雑誌
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結晶性アセチレン重合体の構造
籏野 昌弘
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1962 年 65 巻 5 号 p. 723-727

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抄録

チーグラー型の触媒を用いて合成したアセチレン重合体は,典型的有機半導体として挙動し,非局在性の不対電子をもち,長い共役二重結合系からなる重合体であると推測されたが,この重合体の構造やその共役系の長さについてより詳しく調べるために,赤外吸収スペクトル,X線回折図および比抵抗などを測定し,常磁性共鳴吸収の結果とあわせて,これらアセチレン重合体の構造に関し推論を試みた。アセチレン-d2より合成されたポリ(アセチレン-d2)とアセチレン重合体の赤外吸収スペクトルを観測し,それらの各バンドを比較し,各バンドの帰属を行なった。その結果,このアセチレン重合体は対称性の大きいトランス・トランス型共役二重結合からなる平面ジグザグ構造であることを証明した。X線回折図によれば,重合体分子面相互の間隔は3.754Åと推論されたが,この距離は一つの分子鎖からもう一つの分子鎖へ結晶内の電子が移行することができる程度に近いものと考えられる。ΔEGと常磁性共鳴吸収スペクトルのΔHmslのそれぞれの値から,この重合体において結晶性のものでは共役数が25以上,非晶性のものでは14未満であろうと推算した。

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