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村橋 俊介
1962 年65 巻5 号 p.
643-648
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
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古川 淳二, 三枝 武夫
1962 年65 巻5 号 p.
649-657
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
アルデヒド,ケトンおよびアルキレンオキシドの高重合は高分子合成における最近の研究テーマの重要なものの一つである。アセトアルデヒドとアルキレンオキシドには,ルイス酸,アルミナ,有機金属化合物,金属アルコキシド,金属アルコキシドの部分加水分解物等の共通の触媒が多く,これらのうちルイス酸を除く他の触媒系の作用機構は配位アニオン機構で説明される。すなわちモノマーが触媒系の金属-酸素の結合の金属に配位して活性化され,それがアニオンの攻撃をうけて重合の開始,成長が行なわれるとするものである。このような共通の作用機構から各触媒系の挙動を述べる。さらに安定で結晶性を有するアセトンのポリマーについて略述する。
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庄野 達哉, 小田 良平, 奥 彬
1962 年65 巻5 号 p.
658-661
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
1,2-シクロプロパンジカルボン酸およびその同族体はMcCoy[J.Am.Chem.Soc.80,6568(1958)]らの方法によってα,β-不飽和カルボン酸エステルとα-ハロカルボン酸エステルの縮合によって合成した。こうして得られた酸はシス,トランスの混合物である。この異性体を分離するためにはこの異性体混合物を塩化チオニルで処理することが非常に簡単な分離法であることを見出した。この処理によってシス異性体は酸無水物に,一方トランス異性体は酸塩化物になる。これらは分別蒸留により簡単に分離できる。つぎに分離されたトランス,およびシス-シクロプロパンジカルボン酸を若干のジアミンおよび2価フェノールと縮合させた。そして得られたポリアミド,ポリエステルの性質を検討した。縮合法としては界面,溶液および溶融法を用いたが界面縮合法がもっとも良好であった。得られたポリエステルは一般に脆いがこれに対してポリアミドは強靱で紡糸することができた。特に3-メチル-1,2-シクロプロパンジカルボン酸とピペラジンからのポリアミドはもっとも強靱で,その極限粘度は1.38であった。
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長谷川 正木, 錦織 和子, 岡太 昭
1962 年65 巻5 号 p.
661-664
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
ジピコリン酸を原料とする数種のポリアミドの合成を試みた。
重合方法としては,界面重縮合および加熱重合の両法を検討したが,それらの方法のうち,シピコリン酸ジフェニルエステルとジアミンから脱フェノール反応による重合法によってのみ高重合度のポリマーをうることができた。この重合法を用い,一般式H
2N(CH
2)nNH
2(ただしここでn=2,4,5,6,7および9)で表わされるジアミン,およびm-キシリレンジアミンからポリアミドを合成した。これらポリアミドのうちエチレンジアミンを原料とするものを除いては,すべて優れた可紡性を示した。これらのポリアミドについて融点,比重の関係を調べた。また各種溶媒に対する溶解性を調べた結果,この中幾種かのポリアミドは,クロロホルム単独あるいは四塩化炭素-メタノール混合溶媒等に溶けることが知られた。さらに,ヘキサメチレンジアミンまたはm-キシリレンジアミンを原料とするポリアミドについては,溶融紡糸を試み,えられた繊維については延伸条件,復屈折率,吸湿性等の測定を行なった。
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新井 秀男, 竹田 侑弘, 広岡 誠, 村田 二郎
1962 年65 巻5 号 p.
664-666
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
メチルビニルケトンとアントラニル酸から得られるキノリン-4,8-ジカルボン酸ジメチルエステル(I)を原料にして,主鎖中にキノリン環を含むポリアミドを合成した。(I)とヘキサメチレンジアミン(II)とをメタノール中で加熱してプレポリマーをつくり,さらに減圧下に加熱して重縮合を進め,mp175~185℃のポリアミドを得た。このものの溶融曳糸性はよいが,曳糸したものは折れ易く低温延伸性も少ない。しかし,(I)およびアジピン酸ジメチルエステルと(II)との共重縮合で得られたコポリアミドは(I)が20~10mol%の場合,mp228~243℃で溶融曳糸性がよく,曳糸したものの見かけ上の強度,低温延伸性もよい。また,耐溶剤性はナイロン66とほとんど同じである。
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依田 直也
1962 年65 巻5 号 p.
667-670
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
1個のモノマー単位中に2個の芳香環を含むジカルボン酸のポリ酸無水物を合成する目的で,2,2-ビス-(4-カルボキシフェニル)-プロパンを合成し,その重縮合によって高融点の可紡性重合体を合成した。さらにエチレングリコール-1,2-(4-カルボキシフェニルエーテル)-ジアセテートを合成し,これから得られるポリエーテルポリ酸無水物と各種重合体の性状を比較検討した。
アセトンとアニリンの縮合生成物のSandmeyer反応によって得られる2,2-ビス-(4-カルボキシフェニル)プロパンのポリ酸無水物はmp238~240℃,軟化点140℃の曳糸性のある結晶性重合体であって2,2-ビス-(4-オキシフェニル)プロパンのポリカーポネートに対応する骨格構造を有する。またエチレングリコール-1,2-(4-カルボキシフェニルエーテル)のポリ酸無水物としてmp215℃,軟化点108℃の可紡性重合体を合成した。
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依田 直也
1962 年65 巻5 号 p.
671-676
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
1個のモノマー単位中に2個の芳香環を含む芳香族ポリ酸無水物の構造と性質を比較検討する目的で,エチレングリコール-1,2-(4-カルボキシフェニルエーテル)を合成し,ここに得られたジカルボン酸を無水酢酸で処理し,得られるジアセテートを減圧加熱下に縮重合を行なうことによってポリ酸無水物のポリマーブロックを作成した。得られたポリマーを紡糸温度252~257℃,巻取速度21m/minの条件でモノフィラメントに溶解紡糸を行ない,ポリ酸無水物未延伸糸を得た。これを100±2℃の条件で延伸(3.0倍)を行ない,さらに熱処理を経て延伸熱処理糸を得た。このポリ酸無水物繊維のX線回折ならびに赤外スペクトルのデータから配向性が良好であることを確認し,さらに延伸,熱処理によってポリマーの結晶性が増加することを認めた。また2,2-ビス-(4-カルボキシフェニル)プロパンの縮重合によって得られたポリ酸無水物のX線回折ならびに赤外スペクトルのデータに基づいて同一骨格構造を有する2,2-ビス-(4-オキシフェニル)プロパンのポリカーボネートとの立体配置の構造を比較検討した。
ここに得られた芳香族ポリ酸無水物は熱ならびに加水分解に対してきわめて良好な安定性を示すことを認め,吸湿性を検討し,ポリマーの物性におよぼす分子の構造の影響を考察した。
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熊野谿 従, 赤土 一郎, 桑田 勉
1962 年65 巻5 号 p.
676-681
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
熱時にも剛直性を失わない熱剛直性フェノール樹脂の合成に先だち,硬化反応の反応性の点で特徴のある3種のフェノールノボラックにヘキサ5%(重量)を添加して熱ロール掛けを行なったのち,300kg/cm2の加圧下に160℃で0.5,2,4時間成形した試験片の剛性率の温度変化を調べ,速硬化性フェノールノボラック樹脂は酸性触媒で得られるものに比べ,とくに剛性率の温度変化が大きく,熱剛直性の小さい硬化樹脂を与えることを認めた。また酸性触媒で普通のフェノールノボラックをフェノールあるいは高乾m-クレゾール酸から合成する際に,p-ベンゾキノンを5あるいは10%(重量)添加後縮合を行なって得られるキノン変性フェノールノボラック樹脂は, ヘキサとの反応により広い温度範囲にわたって剛性率が大きく,かつ高い転移点を有し,剛性率の温度変化の小さい硬化樹脂を生じる。とくにキノン(10%)-m-クレゾール酸の系ではヘキサの添加量5%でも, 普通のフェノールノボラック樹脂ではヘキサ10%を添加した際と同じ程度の剛性率の温度依存性を示し,顕著な熱剛直性を示している。
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谷本 重夫, 村尾 嘉一, 小田 良平
1962 年65 巻5 号 p.
682-684
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
m-フェニレンジアミンとエチレンブロミドとを縮合させてアルデヒド反応性樹脂を合成した。このものの構造を,赤外吸収スペクトルにより確かめ,さらにアルデヒドに対する作用について研究した。1gの樹脂は濃厚なホルムアルデヒド水溶液中において3~4時間に約0.05gのホルムアルデヒドと化学的に結合した。また,50%ベンズアルデヒドのエチルアルコール溶液中において1gの樹脂は3~4時間に約0.20gのベンズアルデヒドと結合した。この結合ベンズアルデヒドを10%塩酸で処理して脱離させた。樹脂は水洗し,さらにカセイソーダ水溶液で洗浄し,さらに水洗して再生した。かくして反復使用したが樹脂の吸収能力の低下は全然見られなかった。また,他のアルデヒドをも化学的に吸収することがわかった。このことより樹脂が希少な高級アルデヒドの捕集に極めて有用であると考える。
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大河 原信, 武本 宣教, 北岡 宏, 春木 英一, 井本 英二
1962 年65 巻5 号 p.
685-688
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
フェロセンを原料としてその1,1'位にCOOH(IV),CH
2OH(VI),COCl(VII),CH(OH)CH
3,CON
3,NCOなどの基をもつ対称形の2官能性フェロセンを合成した。これらを種々のジアミン,ジオール,ジイソシアネート類と反応させて,重付加あるいは重縮合形ポリマーの合成を試みた。(IV)とジアミンの反応は常法では炭化したが,(VII)とジアミンを界面重縮合させると黄色粉末のポリマーを与えた。(VII)とヘキサメチレンジアミンの場合,また(VI)からえられるものは,一般に有機溶剤に不溶でかなり高重合度のものであるが,その他はギ酸やジメチルホルムアミドに溶け,重合度も低く,環化した疑いもある。これらポリマーはCe
4+,硝酸などで酸化されるが,アスコルビン酸,Ti
3+などで再び還元される酸化還元樹脂である。
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木村 彰一, 平井 公治, 井本 稔
1962 年65 巻5 号 p.
688-690
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
ジイソプロピリデン・グルコース,あるいはジイソプロピリデン・ソルボースにメタクリル酸クロリドを反応してそれぞれのメタクリル酸エステルを合成した。得られた無色シロップ状の生成物の比旋光度はそれぞれ-28.8℃,-8.6℃であった。メタクリル酸ジイソプロピリデン・グルコースをAIBNを触媒として種々の条件で重合させると,[η]=0.59~1.12の範囲で[α]
19D=-47.4~-48.4°のほぼ一定値を得た。メタクリル酸ジイソプロピリデン・ソルボースよりは,[η]=0.25,[α]
19D=-84.5°のポリマーを得た。これらを酸加水分解することにより,水溶性でかつ還元力を有するポリメタクリル酸グルコース(PMG),ポリメタクリル酸ソルボースを得る。PMGはフェニルヒドラジンにより不溶性の黄色ポリマーとなり,また過ヨウ素酸で酸化すると水に不溶のポリマーとなる。
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岡田 鉦彦
1962 年65 巻5 号 p.
691-695
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
金属ハライド,金属ハライドと塩化アセチルの組合わせ,金属アルコキシド,トリエチルアルミニウム,過塩素酸,および過塩素酸と無水酢酸の組合わせなどの種々の触媒を用いて,1,3-ジオキソランの重合を調べた。その結果,過塩素酸と無水酢酸の組合わせ触媒が最も有効であることを認め,おもに,この触媒を用いて重合温度,触媒濃度,触媒の添加方法,および触媒2成分の割合などの重合に及ぼす影響を検討した。
得られたポリ1,3-ジオキソランは,水,アセトン,ジオキサン,ベンゼンに可溶の白色粉末状固体で一部結晶性であるが,分子量は低く(~7000),融点~55℃で,その構造から予期されるように酸に対して非常に弱い。置換1,3-ジオキソラン類は一般に非常に重合しにくい。
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藤井 弘保, 三枝 武夫, 古川 淳二
1962 年65 巻5 号 p.
695-698
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
アセトアルデヒドの重合においてアルミニウムアルコオキシドの部分加水分解物を触媒に用いるとイソタクチックブロック(結晶性)とアタクチックブロック(非晶性)とからなるステレオブロックポリマーが得られることを見出した。このポリマーは非晶性ポリマーよりは弾性が少なく,またその溶解性はイソタクチックおよびアタクチックポリマーの中間的性質を示す。一方,アルコキシドの部分加水分解物は,アルコキシドと,ヒドロキシド(またはオキシド)との中間体と考えられ,この特質がステレオブロック重合の2元的性質に影響をおよぼしていると考えられる。すなわちアルミニウムアルコラートでは結晶性(イソタクチック)ポリアセトアルデヒドが,アルミナでは非晶性(アタクチック)ポリマーが得られることが知られている。さらにアセトアルデヒドが触媒上で吸着することがこれら三つのアルミニウム触媒の共通の特徴であることを見出した。この吸着は赤外吸収スペクトルを用いて確認した。すなわちアセトアルデヒドをこれらの触媒に吸着させると常にカルボニル基の吸収のシフトが起った。
また同様なステレオブロックポリマーが立体規則性重合触媒(ジエチル亜鉛)と不規則性重合触媒(アルミナ)との組合せと考えられるアルミナ-ジエチル亜鉛系触媒によっても得られた。
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三枝 武夫, 今井 宏輔, 平井 節男, 古川 淳二
1962 年65 巻5 号 p.
699-702
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
テトラヒドロフランと3,3-ビス-(クロルメチル)オキサシクロブタンとの共重合を,種々のフリーデル・クラフツ触媒をつかって行なった。SnCl4,AlBr3およびBF3錯合体を触媒とした場合に重合体が得られ,生成物を溶剤によって分別し,各フラクションの分析から真の共重合体が生成していることを明らかにした。共重合体はその組成によって性質が変わり,テトラヒドロフランの多い時にはクロロホルムにとけるゴム状体,3,3-ビス-(クロルメチル)オキサシクロブタンの多い時には樹脂状固体であった。BF3・エーテレートを触媒とした0℃での共重合において,仕込みモノマー比と生成共重合体の組成からMayo-Lewisの交点法でモノマーの反応性比をもとめた結果
r
1(テトラヒドロフラン)=1.00±0.05
r
2(3,3-ビス-(クロルメチル)オキサシクロブタン)=0.82±0.05
となった。
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伊藤 維厚, 林 久明, 三枝 武夫, 古川 淳二
1962 年65 巻5 号 p.
703-707
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
塩化アリル,ブテン-1,二酸化イオウの三者を適当な割合に混合し,ラジカル重合触媒の存在下で重合させると白色固体の3元共重合体をあたえる。この3元共重合体は
〓x:ポリマー中の塩化アリルのモル分率
なる組成を有し,可溶,可融で加工できる。
この3元共重合を塩化アリルー二酸化イオウ1:1モノマーコンプレックス(M
1)とブテン-1-二酸化イオウ1:1モノマーコンプレックス(M
2)との2元共重合と考えるとM
1とM
2との反応性比が一義的に定まり,それよりつぎの共重合組成式を導くことができた。
(M
1)/(M
2)=[AC]
0{0.1[AC]
0+[BT]
0}/(M
1)/(M
2)=[AC]
0{0.1[AC]
0+[BT]
0}/[BT]
0{[AC]
0+5.0[BT]
0}
ここで[AC]
0,[BT]
0は塩化アリル,およびブテン-1の初濃度,(M
1),(M
2)はポリマー中のM
1,M
2のmol%である。
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岡村 誠三, 東村 敏延, 田中 厚生
1962 年65 巻5 号 p.
707-711
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
β-プロピオラクトンのアルカリ触媒による重合を行ない,重合条件と生成ポリマーの分子量との関係を検討した。従来β-プロピオラクトンはアルカリ触媒では高重合度のポリマーは得られていないが,無極性溶媒中で低モノマー濃度,低触媒濃度で重合を行なうと,カセイカリ触媒によって高分子量のポリエステル型のポリマーが得られた。触媒としてアルカリ金属の水酸化物,炭酸塩,酢酸塩を用いると,重合速度は金属のアルカリ性が強く酸性の弱い酸の塩ほど大であった。しかし生成ポリマーの重合度については重合速度のように簡単な関係は見出されなかった。比較のため塩化スズ(IV)など酸性触媒を用いて重合を行なったが,生成ポリマーの構造はアルカリ触媒で得たポリマーと若干差があることが認められた。
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岡村 誠三, 東村 敏延, 富川 昌也
1962 年65 巻5 号 p.
712-716
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
BF
3・O(C
2H
5)
2を触媒としてトリオキサンの溶液および固相でのカチオン重合の動力学的研究を行なった。溶液重合では溶媒の誘電率が増加すると,重合速度も生成ポリマーの分子量も増加し,普通のカチオン重合と類似の挙動を示した。しかし重合速度が触媒濃度のほぼ0.5乗に比例すること,ポリマーの分子量が重合の進行に伴なって増加することなど異常な現象が認められた。トリオキサンは固体結晶のままでかなりの速度で重合し,高分子量のポリマーが得られる。しかもこの場合,適当な条件では生成ポリマーは一定の配向を有することがX線図より認められた。以上の結果に基づいて反応機構を議論した。
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籏野 昌弘, 神原 周, 岡本 重晴
1962 年65 巻5 号 p.
716-719
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
チーグラー型の触媒系を用いてアセチレンを重合し,非晶性および結晶性の重合体をえた。この重合体はトランスートランス型共役二重結合からなる規則的構造をもち,長い共役鎖を有するので,安定な不対電子をもつものと期待した。また,共役鎖に沿って電子伝導が行なわれると考え,著者らはこの重合体の常磁性と電気伝導性の測定を行なった。常磁性共鳴吸収の観測によって,これらの重合体のいずれにも相当程度の濃度の不対電子が存在することを見出した。たとえば,非晶性のポリアセチレンには10
18spins/g,結晶性のポリアセチレンには10
19spins/g,酸化したポリアセチレンには10
17spins/gの不対電子が存在することを見出した。これらの常磁性共鳴吸収スペクトルは,いずれも8~10ガウスのΔHmslをもつ狭いシングレットで,波形はいわゆるローレンツ型であった。また,共鳴条件のg因子は2.0028であった。従って,ポリアセチレン中に存在する不対電子は長い共鳴共役系によって安定化された非局在性の不対電子であろうと推論された。また,各試料の電気伝導度の温度依存性は本質的半導体の特性を示す式に従うことも明らかにした。
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神原 周, 籏野 昌弘, 細江 竜男
1962 年65 巻5 号 p.
720-723
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
最近,著者らはチーグラ-型触媒を用いて,アセチレンを重合して得たアセチレン重合体が典型的な有機半導体であることをみいだしたが,さらにこのような重合体を合成することができる新しい触媒系をみいだした。アセチレンよりアセチレン重合体を合成するとき,触媒の一成分として不可欠な遷移金属化合物の性質が重合生成物の結晶性に本質的影響を及ぼす。TiCl
4,VOCl
3,VCl
3,VCl
4のようにハロゲン原子をもつ求電子試薬が用いられると生成するアセチレン重合体は非晶性であって,求電子性の小さい化合物が用いられると生成重合体は結晶性である。そこで,求電子性のごく小さい安定なキレート化合物とAl(C
2H
5)
3系で重合を試み,高結晶性のアセチレン重合体をえようとした。キレート化合物としては,Ti,V,Cr,Fe,CoおよびCuなどの2,4-ペンタンジオノ(アセチルアセトナート)化合物が用いられたが,このうちTiO(CH
3COCHCOCH
3)
2・Al(C
2H
5)
3系やVO(CH
3COCHCOCH
3)
2・Al(C
2H
5)
3系のみが,アセチレンの重合触媒として有効であるのみならず,生成したアセチレン重合体の結晶性は,いちじるしく高かった。ハロゲン化合物と同様に,TiおよびVの化合物のみがアセチレンの重合を行なうことができることは,未充満の電子準位をもつ電子構造に原因があるのであろう。Ti,V以外の金属アセチルアセトナート・Al(C
2H
5)
3系はアセチレンの重合を行なわなかった。
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籏野 昌弘
1962 年65 巻5 号 p.
723-727
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
チーグラー型の触媒を用いて合成したアセチレン重合体は,典型的有機半導体として挙動し,非局在性の不対電子をもち,長い共役二重結合系からなる重合体であると推測されたが,この重合体の構造やその共役系の長さについてより詳しく調べるために,赤外吸収スペクトル,X線回折図および比抵抗などを測定し,常磁性共鳴吸収の結果とあわせて,これらアセチレン重合体の構造に関し推論を試みた。アセチレン-d
2より合成されたポリ(アセチレン-d
2)とアセチレン重合体の赤外吸収スペクトルを観測し,それらの各バンドを比較し,各バンドの帰属を行なった。その結果,このアセチレン重合体は対称性の大きいトランス・トランス型共役二重結合からなる平面ジグザグ構造であることを証明した。X線回折図によれば,重合体分子面相互の間隔は3.754Åと推論されたが,この距離は一つの分子鎖からもう一つの分子鎖へ結晶内の電子が移行することができる程度に近いものと考えられる。ΔEGと常磁性共鳴吸収スペクトルのΔHmslのそれぞれの値から,この重合体において結晶性のものでは共役数が25以上,非晶性のものでは14未満であろうと推算した。
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岡村 誠三, 林 晃一郎, 山本 正夫, 中村 洋子
1962 年65 巻5 号 p.
728-731
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
アセトニトリル, プロパルギルアルコール, プロパルギルブロミド, フェニルアセチレン等の三重結合を有するモノマーの放射線重合の機構を研究した。重合速度は線量率の1次に比例し,活性化エネルギーは小さく,酸素の影響を受けない。ラジカル,アニオン,カチオン触媒重合の結果と対比して,アセトニトリルはアニオン重合と推定されるが,他のモノマーの場合いずれの機構であるかは明らかでない。重合反応のG値は小さく10~50である。生成重合物は共役二重結合を有し,褐色に着色している。重合度は小さく10~50程度である。
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田畑 米穂, 斎藤 武揚, 柴野 博, 祖父江 寛, 大島 恵一
1962 年65 巻5 号 p.
731-734
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
アセチレンの液相および固相における放射線重合を始めて行なった。液相で重合したポリマーと固相で重合したポリマーの構造が顕著に異なることを見出した。前者はシス構造が多く,後者はトランス構造が多いことが,赤外吸収スペクトルから判定された。液相における重合は,カチオン機構であることが判明した。アセチレンを含めた低温固相重合に対して,新しい一つの重合機構を提案した。それは,従来,ラジカル機構とイオン機構の重合があるのに対して,electronicpolymerizationなる機構である。
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田畑 米穂, 祖父江 寛, 原 穆
1962 年65 巻5 号 p.
735-737
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
アクリロニトリルとエチレンの混合系に-80℃付近の低温液相で放射線を照射するとアクリロニトリルのC=CおよびC≡Nの2種類の不飽和基による重合が行なわれる。エチレンは溶媒としてのみ作用し,エチレンの濃度が増すにしたがって,C=Cの重合は抑制されて,C≡Nの重合が行なわれるようになる。すなわち,混合系においてはC=Cのラジカル重合とC≡Nのアニオン重合とが起り,その比率がモノマーの濃度によって連続的に変わる。
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田畑 米穂, 柴野 博, 祖父江 寛
1962 年65 巻5 号 p.
737-740
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
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エチレンとテトラフルオロエチレンを-80℃付近の低温で放射線によって共重合させた。共重合体の構造は両モノマーが,ポリマー鎖中に極めて均一に分布したものであり,結晶性を有する共重合体が得られることがわかった。共重合体の融点は,モノマーの混合組成によって連続的に変化することがわかった。エチレン単独ではカチオン機構で重合し,テトラフルオロエチレン単独では,ラジカル機構の重合であるが,共重合はラジカル機構であることがわかった。任意の組成比の共重合体が常に結晶性であるのは珍しい例である。
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岡村 誠三, 林 晃一郎, 渡辺 晴彦
1962 年65 巻5 号 p.
740-742
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
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アルキレンオキシド類は単独では放射線によって重合し難い化合物であるが,放射線によって容易に重合するアクリロニトリルとの放射線共重合の研究を行なった。最も一般的なアルキレンオキシドとしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドを用いた。室温においては重合収率は大きいが,得られたポリマーはアクリロニトリルのホモポリマーである。低温においては重合収率は小さくなるがポリマー中のアルキレンオキシド含有量は増加し,特に-196℃(固相)において得られたポリマー中のアルキレンオキシド含有量は大きい。ポリマーの赤外吸収スペクトルはアルキレンオキシドの含有量が増加するとともに-COC-の吸収が大きくなりポリマーはベンゼンに可溶となる。これらの事実から,ポリマーは単なる混合物でになく,何らかの形でアルキレンオキシドとアクリロニトリルが化学的に結合している共重合物と考えられる。
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高橋 達, 吉村 晋二, 藤井 賢三, 大塚 英二
1962 年65 巻5 号 p.
743-745
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
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アンモニア-炭酸ガス-水3成分系の飽和溶液,不飽和溶液の平衡を論じる。Janeckeの3成分系の状態図をもとにして,各組成の平衡圧を求め,飽和溶液の平衡関係を,さらに完全なものにした。本3成分系の不飽和溶液の平衡圧を検討し,常圧より40atmまでの平衡圧を容易に求められるようにした。
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及川 充, 岡部 忠夫, 野々垣 三郎
1962 年65 巻5 号 p.
745-749
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
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銅ならびに塩素で活性化した硫化カドミウム微結晶の光電流の応答特性につき検討した。光導電性硫化カドミウム微結晶を合成樹脂中に充填し,1対の電極間に配置したものについて測定を行なった。
光電流の立ち上り応答速度は,投射光の照度が低い場合は,空のトラップの濃度に比例しておそくなる。高照度の場合には,光電流が定常値の1-1/eの値にまで到達するに要する時間は自由電子の寿命時間Tにほとんど等しい。
光電流の減衰の応答曲線を,照射光の強度により,再結合反応支配の部と,トラップから自由電子を補給する反応の支配する部の2部に分解して解析することができる。
高照度の場合の初期の急速な減衰過程は主として再結合反応に基く段階の過程で,その減衰速度から,自由電子の寿命時間T の大体の値が推定され, その値は活性剤としての銅イオンの濃度にほぼ反比例して変化する。
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内藤 輝彦
1962 年65 巻5 号 p.
749-752
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
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二酸化塩素が漂白剤として極めて適当であるということは,その酸化力が他の酸化剤にくらべて温和であるということによっている。酸化力の程度はその酸化還元標準電位を測定することによって目安がつけられる。二酸化塩素の酸化電位はLatimerまたはHolstによって与えられているが,実験的に定めたものは未だない。本報告では実験的に〓Pt(ClO
2)/ClO
2-(m)/KNO
3||KCl/Hg
2Cl
2-Hg〓の起電力を測定することによってこれを求め,E
0として-0.95Vを得た。
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内藤 輝彦
1962 年65 巻5 号 p.
752-754
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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ClO
2のガス電位は次式で与えられる。
E=E
0+RT/Fln(PClO
2/aClO
2-)(1)
同じ濃度の亜塩素酸塩水溶液中におけるClO
2の電位は上式においても明らかなように,等しい電位を示す。しかし,この溶液を強い酸性にするときは,この電位が変化することを認めた。これは,酸性にするときに,この亜塩素酸塩水溶液における,ClO
2-の濃度が変化するのではないかと考え,実験を行ない,ClO
2-の濃度は,次の平衡関係によって変化し,またそれによってClO
2の電位が定まることを認めた。
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向坊 隆, 高橋 洋一
1962 年65 巻5 号 p.
754-758
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
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黒鉛中における物質の移動(拡散・透過)についての知見を得る目的で,各種黒鉛ブロックの臭素吸収速度を,硬質ガラス製真空装置と石英スプリング・バランスを用いて測定した。
黒鉛材料の臭素吸収速度, およびその飽和吸収量は, 黒鉛化度に強く依存するが, 0℃で飽和臭素ガスと反応させた場合,飽和組成は原料が天然黒鉛のものはC
8Br,人造黒鉛ではC
9BrないしC
10Brに相当する。吸収速度は,反応率を時間の平方根に対してプロットすると,黒鉛化度の大きい試料ではいずれも特徴的なS字形の曲線となる。これは,臭素は黒鉛の構造中に固溶し,その一部が可逆的に反応生成物になる,とするモデルに対応し,圧力-吸収量曲線その他の結果もこれを支持する。以上より,この反応が臭素分子の黒鉛構造中の移動がかなり容易な一種の固溶体の生成であることが推論される。
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大谷 杉郎, 桜井 博, 奥 昭, 藤井 純, 古達 敏子
1962 年65 巻5 号 p.
759-765
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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この報告は,黒色火薬中の炭素質物質の作用を明らかにすることを目的とした。最初に榛焼成物の構造や性質が,その焼成温度によっていかに影響されるかを250~700℃間の温度範囲について検討した。次に, これらの結果と,KNO
3-焼成物混合物および黒色火薬の示す挙動との関係を求めた。得られた結果から,今回の実験条件の下では,黒色火薬中の炭素質物質に要求される基本的な因子は,焼成物の骨格構造に基づく次の3つの性質,すなわち空気中の酸化分解のうけやすさ,KNO
2生成能力,熱源としての役割であると推論した。
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大門 信利, 福原 敏男, 平尾 穂
1962 年65 巻5 号 p.
765-768
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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内熱式電気溶融法によって雲母を製造するさいには,従来は発熱体を有する1組の炭素電極に通電して行なわれてきたが,当研究では発熱体を有する1組の予備電極と枝を有する1組の通電用電極によって行なった。つまり以上の2組の電極を雲母原料にておおい,予備電極に通電して発熱体を発熱させて雲母溶融体をつくり,これが落下して予め加電してある1組の通電用電極の枝の間に入って通電用電極間に通電するようになる。
原料の代りに雲母結晶粉末を用い,通電用電極の電力を降下して徐冷したが未溶融の雲母粉末は種結晶の作用をなさなかった。次に通電用電極の側面および下部に加熱体をおき,下部および通電用電極の電力を一定に保ち,側面加熱体の電力を降下させて5℃/hr以下にて徐冷した。未溶融結晶は種結晶として作用し幾分の成長を見たが大部分は各種の配向を有する結晶塊であった。更に好結果をうるには,徐冷速度をもっとおそくすることおよび炉内の等温面を水平にする必要がある。
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二宮 清, 長谷場 哲子
1962 年65 巻5 号 p.
768
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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亜酸化銅-カセイソーダペーストを真鍮板に塗布,乾燥し,これをカセイソーダ電解液中で陰極還元するときは,真鍮板上に密着した平滑な銅皮膜を得ることができる。この電解機構を検討するために,ペースト乾燥時における亜酸化銅の酸化および電解によって生成する亜酸化銅,これに包含される微粒銅,銅皮膜量などをそれぞれ定量した。
電解の進行にしたがって析出する銅皮膜生成の電流効率は電気量の増加とともに対数曲線的に減少し,ペーストに生ずる亜酸化銅および微粒銅は著しく増大する傾向を認めた。また本法により得られた銅皮膜の平均厚さは10-2~10-3mmであった。これは酸化銅の還元の際に生成する水により,真鍮板とペースト層の間に間隙を生じ,還元した銅がペースト中に包含され,さらにペースト層とともに電極から脱落するためであると推論した。
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小林 悦郎
1962 年65 巻5 号 p.
771-777
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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塩化アンモニウムを副生成物とするピロリン酸四ナトリウムの新製法を考え,これに関連する基礎数値を測定した。製法を反応式に要約すればつぎのとおりである。
2H
3PO
4+Na
2CO
3→2NaH
2PO
4+CO
2+H
2O(1)
2NaH
2PO
4→Na
2H
2P
2O
7+H
2O(190~235℃)(2)
Na
2H
2P
2O
7+2NH
3→Na
2(NH
4)
2P
2O
7(pH≈9.1Solu.)(3)
(水でスラリー)(incongruentsolution)〓(4)
(4)式の反応は一応〓の互変二対塩系の一部に入るから,平衡状態図に表わすことが妥当と認められる(NH
4)
4P
2O
7-Na
4P
2O
7-H
2O系の一部,Na
4P
2O
7-NaCl-H
2O系,Na-NH
4-Cl-P
2O
7-H
2O系の一部を調べた結果,ピロリン酸四ナトリウム10水和物の結晶として85~70%を析出させ,塩化アンモニウムを溶液に残すことが明らかになった。
従来のピロリン酸四ナトリウムの製法にくらべ,アルカリ使用量の1/2を最も廉価な工業塩に換え,その塩素も塩化アンモニウムとして回収することができる。
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大平 和夫, 野口 達彦
1962 年65 巻5 号 p.
778-781
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
湿式粗製リン酸中に含まれる各種金属不純物をリン酸(以下P
2O
5と記す)と分離し,除去するために,n-ブタノール,メチルエチルケトン,その他の溶媒による液々抽出を行ない,抽出条件を明らかにし,さらにその結果にもとづいて両者の抽出分離の可能性を主としてn-ブタノールを用いて,詳細に検討した。使用リン酸濃度とn-ブタノールによるP
2O
5抽出率との関係,P
2O
5抽出率におよぼす塩酸,塩化カルシウム等添加の効果を調べ,さらにP
2O
5と金属不純物との分離をよくするために,P
2O
520%程度の比較的低濃度のリン酸を用い抽出回数を多くしたときのP
2O
5,R
2O
3(Fe
2O
3+Al
2O
3)等の累積抽出率,各段抽出液の成分組成を求めた。さらに他の溶媒による分離,溶媒-リン酸-水3成分系相互溶解度も測定した。その結果,次のことがわかった。
1)リン酸濃度が高くなると,P
2O
5の抽出率は大となるが,金属不純物(たとえばR
2O
3)との分離性は悪くなる。
2)リン酸に塩酸が共存すると,リン酸単独の場合よりも,n-ブタノール相へのP
2O
5の抽出率は向上するが,不純物との分離性は悪化する。3)P
2O
520%程度の粗製リン酸を,ほぼ等容のn-ブタノールで抽出回数を多くして抽出すれば,十分にP2O5と金属不純物とを分離できる。4)メチルエチルケトン,n-ブタノール-メタノール混合溶媒による抽出結果から,低コスト溶媒使用の可能性を認めた。
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般久保 英一, 永井 利一, 守谷 一郎
1962 年65 巻5 号 p.
782-789
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
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カルバゾールおよびN-アセチルカルバゾール(NAC)について,それぞれアルミナおよびシリカゲルに対する吸着等温式をベンゼン系で測定し,かつ,NACが接触時間とともにカルバゾールに変質する現象の機構を追求した。この変質現象は,アルミナに浸漬した溶媒のみを使用しても起らずアルミナの共存により始めて起ることを認めた。ここで興味あることには,NACの吸着性はアルミナに対してはカルバゾールのそれより小さくかつ変質するが,シリカゲルでは逆にNACの方がカルバゾールより吸着性は大きいが変質は起らなかった。一方,紫外吸収スペクトルの測定結果や立体障害の計算結果よりみて,NACのアセチル基はカルバゾール核と共役系にないことを明らかにした。また,アルミナ-ベンゼン系のクロマトグラフィーでアセトンを共存させてもカルバゾールがよく吸着するというモデル実験よりみて,NACの吸着はまず強吸着性のカルバゾール核がπ 錯合体の型で平面吸着し, この場合, これと同一平面にないアセチル基は反撥力として働きカルバゾール核の吸着性を弱める。このNACのカルバゾール核の吸着に際し,アルミナにおいては,吸着剤に含まれるOH
-がカルボニル基のC原子を攻撃することによりカルバゾールに分解するが, シリカゲルでは, カルボニル基のO原子と〓Si-O-HのH原子との水素結合による点吸着が加わり,吸着性はカルバゾールより強まるが,脱アセチル反応は起らないものと解釈した。
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小野寺 典雄
1962 年65 巻5 号 p.
790-793
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
スルフリルジイソシアネートは新しい形の無機イソシアネートであるが,その反応性については未知である。したがって反応性を検討する目的で,1価アルコールとの反応について実験した。
まずベンゼンを溶媒とし,30℃での2-エチルヘキシルアルコールとの反応速度定数を求めた。過剰の2-エチルヘキシルアルコールを使用し,1次反応として求めた半減期(イソシアネートの半分が反応する時間)における反応速度定数は,150×10
-4(sec
-1)より大である。比較のために同じ条件でのヘキサメチレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンジイソシアネートとの反応速度定数を求めたが,それぞれ5.77×10
-4(sec
-1),1.26×10
-4(sec
-1)であった。つぎに種々の1価アルコールと反応させて, 相当するスルフリルジウレタンを定量的に得, 物理定数を求めた。それらは元素分析および赤外吸収スペクトルにより確認した。
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楢崎 英男
1962 年65 巻5 号 p.
793-796
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
ポリ塩化アリルをN-ドデシルピペリジンで4級化したもの(I),ジメチルドデシルアミンで4級化したもの(II),N-セチルピペリジンで4級化したもの(III),および塩化アリルと酢酸ビニル(1:1)の共重合体をN-ドデシルピペリジンで4級化したもの(IV),塩化アリルと酢酸ビニル(1:9,1:19)の共重合体をピリジンで4級化したもの(V,VI),塩化アリルとラウリン酸アリル(2:3)の共重合体をピリジンで4級化したポリソープについて表面張力,c.m.c.,浸透力,起泡性,乳化性,可溶化力を測定,検討した。
I,II,IIIは木綿,フェルトに対しともにすぐれた浸透力を有し,また良好な起泡性を有する。IV,Vはジメチルフタレートに対しすぐれた乳化性を示したが化学構造より判定できるように可溶化力は悪かった。これらのポリソープは通常の活性剤と同様にミセルを形成していると考えられる。
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楢崎 英男
1962 年65 巻5 号 p.
796-798
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
ポリ-α-ビニル-β-エチルピリジンを臭化ドデシルで4級化したポリソープ(I)とポリ塩化アリルをN-ドデシルピペリジンで,また酢酸ビニルと塩化アリルとの共重合物(19:1)をピリジンで4級化したポリアリル型陽イオン活性剤(II,III)との混合物について粘度,表面張力,浸透力,起泡性,乳化性,可溶化力について検討した。
IIのIに対する比率がかなり小の時はIIが析出してくるが,IIIは常にとけている。IとIIの混合物の粘度はIIの含量の増加と共に減少し,ある含量より増大するが,IとIIIの混合物の粘度は減少するのみである。混合物の表面張力はほとんどポリアリル型活性剤のそれと一致しており,これらの結果よりII,IIIの大部分はIと結合していないといえる。
IとIIの混合物はフェルトに対する浸透力,ベンゼンに対する可溶化力においてわずかな相乗効果を示した。
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楢崎 英男
1962 年65 巻5 号 p.
799-800
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
二臭化エタン,二臭化ブタンにN-アルキルピペリジンを反応せしめたもの(I),二臭化エタンにジメチルドデシルアミンを反応せしめたもの(II),ニコチンに臭化ドデシルを反応せしめたもの(III),すなわち同一分子内の中央部に2個の親水性基を有する陽イオン活性剤をそれぞれ合成した。
IIIのc.m.c.と表面張力(c.m.c.以上の一定値)はもっとも低かった。浸透力ではII,IIIは室温で,Iの溶解度の低い長鎖化合物も高温ではフェルトに対してよい性質を示した。Iの長鎖化合物と通常の陽イオン活性剤の混合溶液は室温でフェルト,木綿ともによい性質を示した。可溶化力についてII,IIIをN-ドデシルピリジニウムブロミドと比較するとII,IIIはそれぞれベンゼン,2-エチルヘキサノールに悪く,このことはこれらの油の可溶化力は親水性基の性質によることがわかる。n-ヘプタンに対しては3者の間に差異はなかった。
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楢崎 英男, 鈴木 洋
1962 年65 巻5 号 p.
801-804
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
N-n-ドデシルピリジニウムブロミド(I)に若干の非イオン活性剤を添加し,その混合溶液について表面張力,c.m.c.,浸透力,起泡性,乳化性,可溶化力について検討した。
混合物のc.m.c.は染料法, 電導度法では見出せなかった。Iにポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(P=20,P=6)を加えると表面張力対濃度曲線では添加剤の特性が現われ,IとTween-20の混合物ではIの特性が現われた。
親油性非イオン活性剤を加えると浸透力, 起泡性, 可溶化に相乗効果がみられた。
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松田 住雄, 吉川 彰一, 野田 孝平, 林 栄一
1962 年65 巻5 号 p.
805-807
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
イソフタル酸エステルの核水素添加物中に含まれる未水素添加物を,紫外吸収スペクトルの応用により定量した。すなわち試料をアルコール溶液とし,その紫外吸収スペクトルをとり,ベンゼン環による特有の吸収を求めて未水添エステルの量を求めた。本方法は操作が簡単で,迅速なうえ,精度も良好であった。また未水添エステル量の少ない場合でも鋭敏に定量することができた。
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石井 正雄
1962 年65 巻5 号 p.
807-811
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
フリー
酢酸ビニルの連続粒状重合において粒度分布に及ぼす機械的かきまぜの効果について検討した。まず,粒子の浮遊に及ぼす影響を調べた結果,粒子直径が小さく,重合速度が速いほど浮遊速度は小さい。つぎに粒度分布に及ぼすかきまぜの効果を検討したところ,かきまぜ速度が速いほど均一で細かい粒子が得られ,カキマゼ翼はその位置によってそれぞれ適した形状が選ばれなければならない。さらに重合粒子の沈降について理論的に考察し,またその沈降速度の不規則性について考察した。
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津田 鉄雄, 山下 雄也
1962 年65 巻5 号 p.
811-815
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
ジャーナル
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ビニルホスホン酸ジエチルCH
2=CHP(O)(OC
2H
5)
2(M
2)の重合性を検討した。ラジカル単独重合では高重合度のポリマーは得られない。スチレン(M
1)とのラジカル共重合実験によってつぎのような単量体反応性比を得た。r
1=8.87±0.14,r
2=0.06±0.02
スチレン,アクリロニトリル,メタクリル酸メチルに対するビニルホスホン酸ジエチルのラジカル共重合性は小さい。グリニャール試薬,ナフタリンナトリウムなどによってビニルホスホン酸ジエチルは重合し,アニオン重合性の大きいビニル単量体であることがわかる。グリニャール試薬による低温重合によって,極限粘度1.78dl/gのポリビニルホスホン酸ジエチルを得た。
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大河原 信, 栗栖 安彦, 井本 英二
1962 年65 巻5 号 p.
816-818
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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フェニル核にI(OAc)
2基をもつポリスチレン(PJA)の反応性を調べるために,その低分子モデル物質としてC
6H
5I(OAc)
2,p-(CH
3)
2CHC
6H
4I(OAc)
2,p-(AcO)
2IC
6H
4(CH
2)
3C
6H
4I(OAc)
2-pを合成した。これら4種のヨードソアセテート(JA)は氷酢酸中で1,2-ジオールを酸化開裂する。R
2C(OH)C(OH)R
2形の4種のジオールを用い,50~60℃におけるJAの減少速度を追跡し,2次反応速度定数,活性化エネルギーE,頻度係数Aを求めた。モデル物質では完全な2次反応を示すが,PJAでは反応の進行とともに2次からはずれる。同一のJAに対して4種のジオール間のE,A値の拡がりは大きいが,同一のジオールに対しては一般にPJAがモデル物質より5~8kcal/mol小さいE値を示す。またE~logA間には直線関係が成立する。
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大河 原信, 藤岡 信次郎, 井本 英二
1962 年65 巻5 号 p.
819-823
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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ポリスチレンをクロルスルホン化したものをアンモニアまたはメチルアミンと反応させてポリスチレンスルホンアミドを合成した。これを臭素とアルカリで処理すると,N-ブロムポリスチレンスルホンアミドがえられる。これは低分子のモデル物質に比べ活性ブロムの含量はやや低いが,ヨードメトリーで7~13%を示し比較的安定である。これらは高分子試薬として次のような臭素化,あるいは酸化反応を行なうことができる。i)アニリンから2,4,6-トリブロムアニリン(収率91%),ii)アセトアニリドからp-ブロムアセトアニリド(90%),iii)フルオレンから9-ブロムフルオレン(90%),iv)ジベンジルエーテルまたはジエチルベンジルアミンからベンズアルデヒド(50%),v)ベンゼンジアゾニウムクロリドからフェニルアジド(51%),vi)キサントゲン酸カリウムからジスルフィド(63%)。
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御船 昭, 石田 進
1962 年65 巻5 号 p.
824-826
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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ポリエチレンテレフタレート(PET)中に存在するジエチレングリコール(DEG)が,重合体の性質に大きい影響を及ぼすと考えられるので,重合体中のエチレングリコール(EG)およびDEGの化学的分析法を検討し,EGの分析法として四酢酸鉛法をDEGの分析法として過ヨウ素酸・重クロム酸カリウム法を見出し,これによってEG-DEG混合物ではDEG含有量を相対誤差1%以下で求められるようになり,重合体中のDEGも実用に差支えない程度に定量できるようになった。これによって求めたTs=258.1℃の重合体のDEG含量は約2mol%である。
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加倉井 敏夫, 野日 達彌
1962 年65 巻5 号 p.
827-831
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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第三アミンによるエポキシ樹脂の硬化反応を検討するため, トリエチルアミンによるエポン8 2 8 の開環重合を行なった。ゲル化点までの反応を粘度の測定により,ゲル化点以後の反応をジオキサン不溶化率の変化から検討した。溶媒中および無溶媒の場合の粘度変化,エポキシ基反応率から,反応はエポキシ基の二つの形式の反応によることがわかった。比較的遅い初期反応と続く速やかな反応の各々について,反応温度,アミン量の関係,反応の活性化熱を求めた。エポン828の開環重合のゲル化点における反応率は理論的計算により0.5となり,実測値もほぼこの程度になる。ゲル化後の不溶性樹脂の生成量の変化を検討した結果,不溶化反応は可溶性樹脂分子間の反応だけでなく,可溶性樹脂分子と不溶性樹脂との反応も関与していることがわかった。
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上井 一郎
1962 年65 巻5 号 p.
832
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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美間 博之, 北森 信之, 神沢 得之助
1962 年65 巻5 号 p.
833
発行日: 1962/05/05
公開日: 2011/09/02
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