工業化学雑誌
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遷移金属アセチルアセトナート-トリエチルアルミニウム系によるアセチレンの重合
神原 周籏野 昌弘細江 竜男
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1962 年 65 巻 5 号 p. 720-723

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抄録

最近,著者らはチーグラ-型触媒を用いて,アセチレンを重合して得たアセチレン重合体が典型的な有機半導体であることをみいだしたが,さらにこのような重合体を合成することができる新しい触媒系をみいだした。アセチレンよりアセチレン重合体を合成するとき,触媒の一成分として不可欠な遷移金属化合物の性質が重合生成物の結晶性に本質的影響を及ぼす。TiCl4,VOCl3,VCl3,VCl4のようにハロゲン原子をもつ求電子試薬が用いられると生成するアセチレン重合体は非晶性であって,求電子性の小さい化合物が用いられると生成重合体は結晶性である。そこで,求電子性のごく小さい安定なキレート化合物とAl(C2H5)3系で重合を試み,高結晶性のアセチレン重合体をえようとした。キレート化合物としては,Ti,V,Cr,Fe,CoおよびCuなどの2,4-ペンタンジオノ(アセチルアセトナート)化合物が用いられたが,このうちTiO(CH3COCHCOCH3)2・Al(C2H5)3系やVO(CH3COCHCOCH3)2・Al(C2H5)3系のみが,アセチレンの重合触媒として有効であるのみならず,生成したアセチレン重合体の結晶性は,いちじるしく高かった。ハロゲン化合物と同様に,TiおよびVの化合物のみがアセチレンの重合を行なうことができることは,未充満の電子準位をもつ電子構造に原因があるのであろう。Ti,V以外の金属アセチルアセトナート・Al(C2H5)3系はアセチレンの重合を行なわなかった。

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