工業化学雑誌
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N-アセチルカルバゾールの吸着性と反応性
般久保 英一永井 利一守谷 一郎
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1962 年 65 巻 5 号 p. 782-789

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抄録

カルバゾールおよびN-アセチルカルバゾール(NAC)について,それぞれアルミナおよびシリカゲルに対する吸着等温式をベンゼン系で測定し,かつ,NACが接触時間とともにカルバゾールに変質する現象の機構を追求した。この変質現象は,アルミナに浸漬した溶媒のみを使用しても起らずアルミナの共存により始めて起ることを認めた。ここで興味あることには,NACの吸着性はアルミナに対してはカルバゾールのそれより小さくかつ変質するが,シリカゲルでは逆にNACの方がカルバゾールより吸着性は大きいが変質は起らなかった。一方,紫外吸収スペクトルの測定結果や立体障害の計算結果よりみて,NACのアセチル基はカルバゾール核と共役系にないことを明らかにした。また,アルミナ-ベンゼン系のクロマトグラフィーでアセトンを共存させてもカルバゾールがよく吸着するというモデル実験よりみて,NACの吸着はまず強吸着性のカルバゾール核がπ 錯合体の型で平面吸着し, この場合, これと同一平面にないアセチル基は反撥力として働きカルバゾール核の吸着性を弱める。このNACのカルバゾール核の吸着に際し,アルミナにおいては,吸着剤に含まれるOH-がカルボニル基のC原子を攻撃することによりカルバゾールに分解するが, シリカゲルでは, カルボニル基のO原子と〓Si-O-HのH原子との水素結合による点吸着が加わり,吸着性はカルバゾールより強まるが,脱アセチル反応は起らないものと解釈した。

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