工業化学雑誌
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溶媒抽出法による粗製リン酸中の金属不純物の分離
大平 和夫野口 達彦
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1962 年 65 巻 5 号 p. 778-781

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抄録

湿式粗製リン酸中に含まれる各種金属不純物をリン酸(以下P2O5と記す)と分離し,除去するために,n-ブタノール,メチルエチルケトン,その他の溶媒による液々抽出を行ない,抽出条件を明らかにし,さらにその結果にもとづいて両者の抽出分離の可能性を主としてn-ブタノールを用いて,詳細に検討した。使用リン酸濃度とn-ブタノールによるP2O5抽出率との関係,P2O5抽出率におよぼす塩酸,塩化カルシウム等添加の効果を調べ,さらにP2O5と金属不純物との分離をよくするために,P2O520%程度の比較的低濃度のリン酸を用い抽出回数を多くしたときのP2O5,R2O3(Fe2O3+Al2O3)等の累積抽出率,各段抽出液の成分組成を求めた。さらに他の溶媒による分離,溶媒-リン酸-水3成分系相互溶解度も測定した。その結果,次のことがわかった。
1)リン酸濃度が高くなると,P2O5の抽出率は大となるが,金属不純物(たとえばR2O3)との分離性は悪くなる。
2)リン酸に塩酸が共存すると,リン酸単独の場合よりも,n-ブタノール相へのP2O5の抽出率は向上するが,不純物との分離性は悪化する。3)P2O520%程度の粗製リン酸を,ほぼ等容のn-ブタノールで抽出回数を多くして抽出すれば,十分にP2O5と金属不純物とを分離できる。4)メチルエチルケトン,n-ブタノール-メタノール混合溶媒による抽出結果から,低コスト溶媒使用の可能性を認めた。

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