工業化学雑誌
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ウォッチアングレッドナトリウム塩の生成条件と結晶転移
番匠 吉衞斎藤 イホ生田 裕子
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1964 年 67 巻 1 号 p. 193-197

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抄録

番匠吉衞・斎藤イホ・生田裕子ウォッチアングレッドはCS酸(2-クロル-p-トルイジン-5-スルホン酸)をジアゾ化しβ-オキシナフトエ酸にカップリングしたアゾレーキ顔料であり,普通そのカルシウム-,バリウム-レーキが用いられる。この顔料の製造条件は非常に複雑であるため,その調節がむずかしい。
著者らは,その困難さの原因が反応条件と生成する顔料ナトリウム塩の化学構造,同質多晶型との関連にあると考え,pH5~13の条件下でカップリング反応を行なった後,カップリング浴を加熱して性質の異なる数種類の顔料ナトリウム塩を合成した。
得られた顔料の化学構造を元素分析,赤外吸収により調べ,結晶の性質をX線回折,光学-,電子顕微鏡により検討した。また顔料を測色し,色相と結晶転移の関係を調べた。得られた結果は次のとおりである。
1)pH>7のカップリング条件ではジナトリウム塩,pH<7の条件ではモノナトリウム塩が生成する。
2)ジナトリウム塩はα-,β'-,β-型の3種の同質多晶型を持ち,α型は30℃以上で第1の転移を経てβ'-型に,β'-型は第2の転移によりβ-型になる。
3)第2の結晶転移(β'-型→β-型)の温度はカップリング浴のpHに関係し,pHの値の高いほど第2の転移温度は低い。
4)モノナトリウム塩のα-型は50℃以上でモノナトリウム塩のβ-型に転移する。
5)顔料の色,粒度分布と結晶転移の間の複雑な関係が明らかにされた。

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