工業化学雑誌
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アクリロニトリルの塩化亜鉛水溶液重合における過硫酸アンモニウムと過酸化水素の作用
中島 通公三鍋 康彦
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1965 年 68 巻 2 号 p. 373-377

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抄録

塩化亜鉛水溶液中でのアクリロニトリル(AN)の溶液重合の開始段階に関して研究した。過酸化水素(HPO)による重合において溶媒(ZnCl2水溶液)中のHPO濃度,溶媒のpHには適量範囲がある(HPO濃度0.005~0.1%,pHO~1.0)。Cu2+は過硫酸アンモニウム(APS)による場合と同様に微少の変化で,重合速度をほとんど変えることなく顕署に分子量を制御する。APSによる重合開始にHPOを共存させると重合が阻害される。
APSはHPOより強い重合開始作用を持つが,ANないしそのポリマー(PAN)を攻撃して,酸化生成物を生じる作用をも有する。これにより不純化した溶媒中でのAPSまたはHPOによるANの重合は純溶媒に比べて誘導期は遙に短かく,重合速度も速い。
上記のAPSの酸化的攻撃は60℃以上で認め得る程度となるが,酸の添加はこれを抑制する。AN,PAN,アクリルアミド,アクリル酸メチルおよびプロピルアルコールのごとき有機物の攻撃され易さは二重結合と,ニトリル基の存在で非常に大きくなる。生成物の詳細は不明であるが,変質したPANの赤外吸収スペクトルは,酸化亜鉛による変質物,過塩素酸処理物と同様に,ニトリル基,メチレン主鎖の両者が破壊され,カルボニル基,-C=N-結合の生成があったことを示している。

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