1966 年 69 巻 11 号 p. 2142-2144
反応性高分子の原料モノマーであるシアン酢酸ビニルは, 硫酸第二水銀触媒の存在下において, シアン酢酸と酢酸ビニルとの酸残基交換反応から合成されているが, その収率が他のカルボン酸類のビニルエステル化に比べていかにも悪い。そのおもな原因をさぐる目的で, 反応生成物の検索を行ない, 主生成物のシアン酢酸ビニルの他に, エチリデンシアン酢酸, エチリデンジアセテート,エチリデンシアン酢酸ビニル(新化合物)等の副生物を確認した。これらの同定は,別途合成した標準品とペーパークロマトグラフ,ガスクロマトグラフ,赤外スペクトル法によって比較することにより行なった。
以上の結果より, 副反応の主たる原因は, 酢酸ビニルの酸触媒加水分解で生成するアセトアルデヒドの, シアン酢酸の活性メチレン基との反応によるものと考えられる。なお, この反応はシアン酢酸に対してのみ起こり, そのビニルエステルについては起こらないことも確認した。
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