工業化学雑誌
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セリウム塩によるパルプへのメタクリル酸メチルのグラフト重合
荻原 允隆荻原 幸江久保田 仁
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1967 年 70 巻 1 号 p. 103-108

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抄録
セリウム塩に対する反応性の異なる4 種のパルプへのメタクリル酸メチルのグラフト重合の特徴を比較した。パルプの易反応性部分の大きさは銅価と比例的関係にあることを明らかにし,易反応性部分の大きいパルプほど一般に高いグラフト率および大きい分岐数を示し,主としてへミセルロースに由来すると考えられる反応性のやや劣る準易反応性部分はグラフト重合に対して著しい影響を与えないことを認めた。易反応性でない部分もセリウム塩とのレドックス開始作用を示すが,その作用は易反応性部分に比べてやや劣り,重合物の分岐の分子量は高く,分岐数は小さい。セリウム塩で前処理したパルプとモノマーとの反応による方法は,パルプ,セリウム塩,モノマーを同時に作用させる方法に比べて,高い枝分子量と約1/10の分岐数を持つ重合体を与える。同時に作用させる方法では,グラフト率はモノマー濃度に直線的に変化するが,分岐数は,これとほとんど無関係であり,セリウム塩濃度の対数と直線的な関係にある。この関係は各パルプの反応性を反映した特有なものであり,グラフト重合における重要な特性と考えられる。
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