工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
Print ISSN : 0023-2734
ISSN-L : 0023-2734
ABS樹脂物性低下の熱酸化劣化機構に基づく考察
冠木 公明
著者情報
ジャーナル フリー

1970 年 73 巻 7 号 p. 1444-1449

詳細
抄録
ABS 樹脂をギャー型老化試験機にて 70℃, 80℃ および 90℃ で熱劣化させた時の材料物性と, 赤外吸収スペクトルにより追跡した水酸基, カルボニル基およびブタジエン吸光度などの変化より得られた熱酸化劣化機構とを対比させることにより, 材料物性の低下を化学構造的に考察した。すなわち, 熱酸化による化学構造の変化はまずヒドロペルオキシドが急激に生成する区分 (1) と, 次いでこのヒドロペルオキシドから誘起される, たとえば二重結合の酸化反応や主鎖の切断などを主体とする区分 (2) より成っている。
区分 (1) では伸びの低下が著るしく衝撃強度も若干低下するが, 後者は区分(1) →区分(2) で大きく低下することがわかった。引張強度は全体を通じてほとんど低下しないが, 十分に酸化が進んだ区分(2) の後半より急激な低下がみられた。
ABS 樹脂の劣化着色は 70~90℃ の加熱劣化では加熱時間が長くなって熱酸化劣化が進んでも色相の変化はほとんどなく, 黄色ないし黄褐色 (主波長λa :570~590mμ) であるが, この色が次第に濃くなるとともに明るさが鈍くなることが示された。変色が起ると酸化生成物が増加するとともに材料物性が低下する傾向を得た。
著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© 社団法人 日本化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top