工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
Print ISSN : 0023-2734
ISSN-L : 0023-2734
三フッ化ホウ素存在下でのアセトフェノンより安息香酸の生成反応
坪井 彦忠対馬 好文藤井 修冶
著者情報
ジャーナル フリー

1970 年 73 巻 9 号 p. 1993-1996

詳細
抄録

三フッ化ホウ素存在下に酢酸とベンゼンが反応して安息香酸(I)が得られる反応では,アセトフェノン(II)が中間に生成されるが,IIからIが得られる過程は解明されていない。したがって,IIを常圧下で三フッ化ホウ素と反応させ,Iの生成の最適条件および反応径路について検討した。
常圧下でのIIと三フッ化ホウ素との反応により目的とするIの他に,ジプノン(III)および2,4,6-Triphenylpyrylium fluoborate(IV)が主な副生物として得られた。反応条件の影響について検討した結果,Iを得る最適条件は130℃,1hrであり,そのときの収率は18.0mol%(II基準)であった。反応時間の影響について120℃で検討した結果,反応初期にはIIIが多量に生成され,その後IIIの減少にともないI,IVが生成されることが明らかになった。したがって,IIからIが得られる過程は,IIの縮合反応によりIIIを生成し,IIIのH3OBF3OHによる切断およびその後の加水分解によりIとなると考えられる。この過程は,各種アルキルフェニルケトン類の反応および各種脂肪族カルボン酸とベンゼンとの反応結果をも矛盾なく説明できた。また,p-置換アセトフェノン類の反応について検討し,電子供与基により反応が促進されることが認められた。三フッ化ホウ素のかわりに塩化アルミニウムを用いると,安息香酸はほとんど生成されなかった。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© 社団法人 日本化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top