工業化学雑誌
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カセイソーダ媒質下における亜硫酸パルプの空気酸化精製
渡辺 貞良林 治助品川 章一
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1970 年 73 巻 9 号 p. 2014-2020

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抄録

蒸解後のパルプの精製は,塩素処理とアルカリ処理の組合せを何度かくりかえし行なった後,最後に漂白を行なうのが一般である。著者らはこの塩素化のかわりにパルプをアルカリ性媒質の下で,空気酸化することにより,リグニン,樹脂などの非セルロース物質を分解除去することを考え,この精製効果についての研究を行なった。その結果,空気酸化精製法は著しい精製効果を有し,従来の塩素化ならびにアルカリ処理に十分かわり得ることが明らかとなった。たとえば,赤松SPを0.5%のカセイソーダ溶液に浸漬後,3倍にしぼり3.5kg/cm2の加圧空気により80℃ で酸化したところ,パルプ粘度をほとんど低下させることなしに塩素吸収率は原料の1.43%から0.37%へ,樹脂分は1.24%から0.30%へ減少した。またパルプの白色度は61.3から70.3へ向上した。これらの空気酸化試料をさらに漂白したところ, 標準法より高品位のパルプが得られ, パルプ精製において塩素化,,アルカリ処理工程は空気酸化によってまったくおきかえ得ることが明らかになった。本法は従来法に較べて塩素をまったく必要としないのみならず,使用アルカリのかなりの量が節約できて,工業的に大きな意義があるものと思われる。

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