工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
Print ISSN : 0023-2734
ISSN-L : 0023-2734
スチレン-無水マレイン酸共重合におけるジメチルアニリンへの連鎖移動と重合機構
土田 英俊伴野 亟計
著者情報
ジャーナル フリー

1970 年 73 巻 9 号 p. 2040-2045

詳細
抄録

スチレン(St)-無水マレイン酸(MAn)共重合における生長末端ラジカルの性質を明らかにする意味で,正に分極したラジカルと容易に反応して, 退化的連鎖移動を惹起すると期待されるジメチルアニリン( D M A ) への連鎖移動を検討し, 共重合機構を考察した。
DMAへの連鎖移動は退化的なものの他に,有効連鎖移動も生起し,共重合体は交互性が崩れ,MAn含量が多くなることを確認した。見掛けの連鎖移動定数は,ベンゼン中で0.092,アセトン中で0.093であり,St-MAn錯体の単独重合と見做した場合,錯体の見掛けのQ,e値はそれぞれ,Q=O.77,e=+0.79となった。このe値はMAnのe値(+2.25)よりも小さく,St末端コポリマーラジカルも存在することが示唆された。
開始は比較的カチオニックな開始剤がStまたはMAn-St錯体を攻撃してSt側にラジカルを生成する。生長は錯体とフリーのMAnを消費する機構によると見做され, バイラジカル機構は否定される。連鎖移動はSt-MAnまたはDMA-MAn錯体の関与が重要であり,末端不飽和のMAn単位が生成する機構を考慮した。停止反応は二分子停止である。なお,DMA-MAn錯体はラジカル開始能があり,メタクリル酸メチル(MMA)の重合を効率よく開始する。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© 社団法人 日本化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top