1970 年 73 巻 9 号 p. 2040-2045
スチレン(St)-無水マレイン酸(MAn)共重合における生長末端ラジカルの性質を明らかにする意味で,正に分極したラジカルと容易に反応して, 退化的連鎖移動を惹起すると期待されるジメチルアニリン( D M A ) への連鎖移動を検討し, 共重合機構を考察した。
DMAへの連鎖移動は退化的なものの他に,有効連鎖移動も生起し,共重合体は交互性が崩れ,MAn含量が多くなることを確認した。見掛けの連鎖移動定数は,ベンゼン中で0.092,アセトン中で0.093であり,St-MAn錯体の単独重合と見做した場合,錯体の見掛けのQ,e値はそれぞれ,Q=O.77,e=+0.79となった。このe値はMAnのe値(+2.25)よりも小さく,St末端コポリマーラジカルも存在することが示唆された。
開始は比較的カチオニックな開始剤がStまたはMAn-St錯体を攻撃してSt側にラジカルを生成する。生長は錯体とフリーのMAnを消費する機構によると見做され, バイラジカル機構は否定される。連鎖移動はSt-MAnまたはDMA-MAn錯体の関与が重要であり,末端不飽和のMAn単位が生成する機構を考慮した。停止反応は二分子停止である。なお,DMA-MAn錯体はラジカル開始能があり,メタクリル酸メチル(MMA)の重合を効率よく開始する。
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