日本化學會誌
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蛋白に關する研究(第十七報)
タラバガニ罐詰肉蛋白に就て
近藤 金助岩前 博
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1932 年 53 巻 11 号 p. 1013-1025

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抄録

(I)
(1) 半封度容蟹罐(F. C. 51 Fancy)の内容を精査した結果可食物は約195gの肉と約34gの液汁であることを確め可食肉の分析を行つて1罐の蟹肉が供給し得る熱量は約163Cals.であることを知つた。
(2) 液汁のpaH價並びに窒素質物の形態を測定して蟹罐詰肉の状態を考察する時の材料に供した。
(3) 蟹肉を構成して居る所の各種形態の窒素をVan Slyke氏法によつて定量した結果蟹肉中にはHistidine及びLysineが特に多く含有せられて居るが故に榮養上、優良蛋白であることを明白にした。
(II)
(1) 蟹罐詰肉は酒精又はアセトンに溶解する蛋白を含まないが稀薄アルカリ液に溶解する蛋白(此のうちには分解物も多量に含まれて居る)は全窒素質物の約2/3以上であることを確めた。
(2) 稀薄アルカリ液に可溶性の窒素質物のうち醋酸滴加によつて雪出沈澱する蛋白を白色粉末状に分離精製した。含窒素率は無水物中16.01%であつた。
(3) 醋酸及び醋酸曹達液並びに枸櫞酸及び燐酸曹達液内に於ける蛋白の等電行爲を吟味した結果著者等が曩に〓々論證した通り蛋白の等電行爲は緩衝液の種類(何れも弱酸を選んだものであつても)及び蛋白の濃度に影響せられる事を論證した。
4) 分離した蛋白の等電點(見かけ上)は醋酸及び醋酸曹達液内にてはpaH 4.92-4.94であることを實驗した。
5) 此の結果によれば蟹肉に以上の如き等電緩衝反應を附與して蟹罐を製造すれば從來の製品に比して遙かに優越せしめ得ることを論述した。
6) けれども蟹罐詰製造法を理想的に改善して貯藏耐久性を増進せしめ食味榮養價を優秀ならしめるには先づ蟹の生肉蛋白の特性を知悉すべきだと信ずる。

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