日本化學會誌
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スチレンとオゾンとの反應に關する研究(第一報)
河村 文一
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1938 年 59 巻 12 号 p. 1391-1398

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抄録

1.スチレンを氷水中にて冷却しつつ約2%オゾン化空氣を通じたるにスチレンは容易にスチレンオゾニドとなれり.
2.スチレンオゾニドの室温に於ける分解速度は相當大なり.
3.スチレンはスチレンオゾニドによりて酸化し難けれども,スチレンの重合速度はスチレンオゾニドにより極めて顯著に促進せらる.
4.一定温度に於けるスチレンの重合促進速度はスチレンオゾニドの濃度増加と共に増大すれども,スチレンオゾニドの濃度増加するに從ひ重合促進速度の増加率は小となる.
5.スチレンオゾニドの濃度一定せる時は,チレンオの重合促進速度は温度の増加と共に加速度的に増加す.
6.常温に於けるチレンオゾニド重合促進作用の衰退速度はスチレンオゾニドの自然分解速度に比して緩慢なり.
7.スチレンオゾニドの分解成績體たるべき化合體中ベンツアルデヒドはスチレンオゾニドには及ばざれどもスチレンの重合速度を促進し,フオルムアルデヒド,安息酸,蟻酸は返つて負促進作用をなす.
8.從つてスチレンオゾニドの自然分解によりて生成すべき化合體中はベンツアルデヒド,安息酸フオルムアルデヒド,蟻酸等の外にPeroxide型化合體が存在すべきものと考へる.
終りに本研究を行ふに當り終始御懇篤なる御指導を賜はりたる小松茂教授に對し謹みて感謝し,併せて實驗補助金を授けられたる日本學術振興會竝に實驗中屡々有益なる御注意を興へられし横山盛彰先生に對して深謝す.

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