日本化學會誌
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玉川毒水除害の化學的研究
三浦 彦次郎
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1939 年 60 巻 10 号 p. 958-970

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抄録

(1) 玉川毒水除害の目的の下に湧泉と澁黒温泉地帯附近にて得られる安山岩,粘土類との作用に就き研究せる結果粘土,安山岩粉末はその使用量を増加する時は比較的短時間にても迅速に作用し遊離酸の97%をも容易に除去し得られ遊酸除去劑として甚だ有効なる事が認められた.
(2) 澁黒湧泉は大理石とは極めて迅速に作用して中和される.從つて澁黒湧泉の中和には炭酸石灰を使用し得られる.
(3) 澁黒湧泉の遊離酸除去の實施方法につき考察し湧泉の地下注入法が最も適合するものなる事を述べた.
(4) 玉川下流に於て灌流用水その他に利用する場合の遊離酸除去法としては河水の必要量を分水し炭酸石灰中和法を行ふ事が適當なる事を述べた.
(5) 秋田縣廰にて實施しつつある玉川毒水除害事業に就き筆者の關與せる湧泉の地下注入法實施状況の概要を述べpH1.1の原泉が地下注入後澁黒河岸に漏出せるものはpH2.8となり豫期の如く遊離酸の大部分が除去せられ地下注入法の甚だ有効なる事が實證せられた事を述べた.
(6) 玉川毒水類似の遊離酸含有河川に對しその源泉附近にて地下注入法を應用する時には玉川毒水の如く含有遊離酸の大部分を除去し得べき事を考察した.

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