日本化學會誌
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酸化マグネシウムと酸化チタンとの固體反應(第三報)
反應の機構
田中 泰夫
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1939 年 60 巻 10 号 p. 949-957

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抄録

1) 前報に引續き酸化マグネシウムと酸化チタンとの反應に就て,試料を豫め1200°に加熱せる場合の實驗を行ひ,又水蒸氣の影響並に900°及び780°に於ける反應を明にしたが,何れの場合もこの反應に於て最初に生成されるものはMgO・2TiO2である.
2) MgO・TiO2とTiO2との反應に於ては速かにMgO・2TiO2を生ずるも, MgO・2TiO2とMgOとよりのMgO・TiO2の生成は困難である.
3) 1200°及び1000°に於けるMgO-TiO2系の焼成收縮を測定したが,之等の温度に於ても2MgO・TiO2の生成に伴つて焼結が著しい.從つて低温に於てはMgOに少量のTiO2を加へた場合に焼結が最大となる。
4) MgOとTiO2との反應の機構に就て考察するに,温度が十分高くなれば夫々の結晶内に於てMg++及びTi++++イオンが動き易くなり,双方の結晶の相接する處に於ては兩者が作用して先づ無定形の皮膜を生ずる.次で茲に行つた實驗温度にては之より容易にMgO・2TiO2の結晶が發達する.既にこの結晶を生ずれば以後の反應は兩成分のこの層を通じての擴散に依て進行する.
5) この混合比の如何に拘はらずMgO・2TiO2の最初に生成されるのは, MgO・2TiO2の結晶がMgO・TiO2に比して簡單にしてその結晶生成の容易なると, MgO・2TiO2を通じての擴散が又容易に行はれる爲と考へられる.
6) MgO・2TiO2生成反應の速度はこの層を通じてのMg++及びTi++++の擴散に依つて支配されるものと見られ,各温度の速度恒數よりその活性化エネルギーを求むれば36.000ca1となる.この大きさは他の酸化物間の固體反應の活性化エネルギーの値と大體一致し,之は又金屬結晶間の擴散の活性化エネルギーと同様の大きさである.

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