日本化學會誌
Online ISSN : 2185-0909
Print ISSN : 0369-4208
α-アミノ酸の味と構造との關係に就て(第二報)
アミノ酸の立體化學的研究(II)
金子 武夫
著者情報
ジャーナル フリー

1939 年 60 巻 6 号 p. 531-538

詳細
抄録

一般にR-CH(NH2)COOHなるα-アミノ酸に於てl系(天然系)に屬するものは常に無味乃至は苦味を呈するに反し, d系(非天然系)に屬するものは甘味を呈するものである.
從來チロジン及びフェニルアミノ醋酸はd系, l系の間に味の差がなく且つ無味なりとせられてゐたが前報に於てチロジンが何等例外でないことを明かにした.今囘はフェニルアミノ醋酸に於ても亦この現象に例外のないことを明かにした.
然るにアラニン及びα-アミノ酪酸はd系, l系共に甘く例外である.
そこでR1(R2)C(NH2)COOHなるα-アミノ酸に於て
R1とR2が同一の置換基である場合: R1, R2がCH3, C2H5及びC3H7(新アミノ酸)
R1とR2が異つた置換基である場合: (R1がCH3, R2がC2H5), (R1がCH3, R2がC3H7),
(R1がC3H7, R2がC6H5CH2) (新アミノ酸)
なる各種のアミノ酸を合成して, R1R2の大きさとその味との關係を檢べた結果,α-アミノ酸が甘味を發現する爲には次の條件の必要なことを明かにした.
R1(R2)C(NH2)COOHなるアミノ酸に於てR1=Hの場合が天然系(l系)アミノ酸とすれば,甘味を呈する爲にはR1は任意の大いさで差支ないがR2はC3H7より小なる厚子團であることを必要とする.
上記味よりの結果
(-)-Phenylaminoessigsäure及び(-)-Isovalinはd
(+)-Phenylaminoessigsäure及び(+)-Isovalinはl
に屬することを知つた.

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top