日本化學會誌
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本邦火山の地球化學的研究(其二十二)
淺間火山山頂及び其附近に於ける噴出瓦斯並に湧出水の研究(第五報)
野口 喜三雄
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1940 年 61 巻 5 号 p. 432-446

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抄録

淺間火山の主として長野縣側に於ける約130個の觀測點に於て湧水及び河水の水温並にpHを測定した結果
1)水温
湧泉並に噴氣孔の温度分布を一括すれば噴氣孔では車坂噴氣孔の67.0°が最も高温で,前掛山噴氣孔45.0°が之に次ぐ,湧泉では小瀬温泉の40.0°が最も高く,星野温泉37.7°が之に次いで温度が高い.温度分布を見るに車坂噴氣孔,前掛山噴氣孔は淺間山,小淺間山,車坂山,高峰山を結ぶ直線上に位し,淺間山麓に於ては星野温泉,干ケ瀧温泉,小瀬温泉等の地方及び湯の瀬,大笹鑛泉の附近が温度が高い.蛇掘川,濁川流域の湧水は悉く低温である.最も低温なるは杉瓜,鳥居原の井戸で7.5°である.又之等諸種湧水の温度變化を檢するに地獄谷湧水を除いては其變化は多くて1~2°程度であつた.
2)湧水のpH
地獄谷噴氣孔溜水側湧水III(pH1.2)は最も酸性強く,最もアルカリ性の湧水は三笠温泉(pH8.2)である.一般に湧水は山頂に近いものほど酸性度高く,夫より海面上高が低下するに從ひ酸性度低下し谷底に於ては中性又は弱アルカリ性となる.又淺間山附近諸種湧水のpH變化を檢するに地獄谷湧水を除いては其變化は極めて少く多くて0.1~0.3程度であつた.
3)河水のpH
萬座川の水はpH 4.3で最も酸性高く,其他の河水は何れも中性又は弱アルカリ性である.河水のpHは一般に水源地に於ては酸性度高く流下するに從ひ酸性度低下し中性又は弱アルカリ性となる.

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