日本化學會誌
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アスコルビン酸酸化の研究IV
醋酸バッファー中に於ける空氣酸化2鐵鹽の接觸作用
篠原 龜之輔稲葉 安養子
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1941 年 62 巻 2 号 p. 123-130

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抄録

鐵鹽(Fe〓及びFe〓)はアスコルビン酸空氣酸化に對し,銅鹽と共存する際のパーオキシダーゼとしての作用以外に,夫自身オキシダーゼとしての作用を有する.此作用は枸櫞酸バッファー中に於て最も顯著,醋酸バッファー中に於ては稍々弱く,而して燐酸バッファー中に於ては全く認められない.燐酸バッファー中に於て鐵鹽が接觸作用を示さない理由はFe〓が燐酸鹽となつて沈澱する爲めである. Szent-Györgyi及びBarron等が鐵鹽の該作用を否定した原因は彼等が孰れも燐酸バッファーを用ひて實驗を行ふた事にある.
醋酸バッファー中の鐵鹽の該接觸作用は微弱で同一モル濃度の銅鹽の夫の約3/10000に相當する.
恒定酸素壓下に於ける鐵接觸酸化は反應の末期に至る迄零次反應として進行し,其速度は恒定pHに於ては鐵鹽濃度の増加に伴つて増大するがアスコルビン酸濃度に對しては獨立的である.
恒定酸素壓及び鐵鹽濃度に於ては該速度は水素イオン濃度の二乘根に逆比例するが,アルカリ性領域に於ては鐵の接觸作用は全く熄む.
酸素壓の増大は該速度を増大する.
銅鹽の接觸酸化の場合と異なり,鐵鹽の接觸酸化に於てはH2O2は出現しない.

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