1942 年 63 巻 11 号 p. 1503-1508
1, 2-ニクロルエタン液體のラマン・スペクトルに就て更に精密なる測定を行つた結果新に709cm-1及び223cm-1なる波數の線の存在を確め得た.而して種々の考察の結果,之等をトランス形分子の中心に逆對稱の振動に對應させるのが至當のやうに思はれる.選擇律によれば,之等の振動はラマン効果に現れ得ないのであるが,液體に於ける分子の相互作用等の原因によつて,弱い線として出現したのである.此の中223cm-1の線はエントロピーの計算に際して,極めて重要なる役割を演ずるものである.尚此の研究によつて1, 2-ニクロルエタン分子の骨格振動のすべての波數を實測し得たから,それ等を永年方程式より求め得る計算値と比較して論じた.
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