日本化學會誌
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ヌクレオチード,チアゾール型九種デヒドロゲナーゼの各種基質構造の差異による作用の強弱とMg..による賦活効果(第四報)
田所 哲太郎齋藤 恒行
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1942 年 63 巻 3 号 p. 256-259

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抄録

著者1)は酵母ヌクレイン酸,胸腺ヌクレイン酸,ピリヂンヌクレオチード,グアニル酸及グアノシン等5種のヌクレオチード型とヴィタミンB1, 4-メチル-5-β-ヒドロキシチアゾール, 4-メチルチアゾール-5-カルボン酸及び4-メチル-5-β-クロルエチルチアゾール等4種のチアゾール型デヒドロゲナーゼ作用を研究せり.兩型酵素の構造中-CH2OH基の出現にて作用顯著となり-COOH基に變化して減退し-CH2Clとなりて作用全く失はる.兩型酵素は基質アルコールの酸となり,六炭糖の構造中-CHO又は-CH2OH基の-COOHに變化するとき酵素作用減退す.兩型酵素は基質の-CH2基に隣接する-CHOH基ありて好適なるも-CHO基により強力となれねもの-CHOH基の多數存在はこれを減少す.ヌクレオード型は基質中-NH2の存在に對し感度少きもチアゾール型は感度高く阻遏せらる故にマンノースとグルコサミン及びグココールと醋酸等に對する特異性即ち基質選擇性は酵素のチアゾール核を有することと基質中の-NH2基を含むことなより決定せられ-CHO, -CHOH又は-COOHとは無關係なり.これを換言すれば-CHO, -CHOH又は-COOH基には兩型酵素は共通性を有すと論ぜり.これ等9種のデヒドロゲナーゼ作用は共にMg..により賦活せらる.恐らくピリヂン,プリン及チアゾール核二重結合を有する窒素と副化合價により結合すると考へ水素運搬機構は基質中の-CHOにより促進せらると述べたり.本報告にはグアニル酸及びチアゾール型2種酵素を選び基質の種類及びFe.., Fe..., Ni.., Cu..及びAl...イオンの影響の研究結果を次の如く述べたり. (1) ガラクトースに比レガラクトウロン酸を基質とせば酵素力減退することマンノースとマンノウロン酸と同一なり. (2) グルコース,マンノース及びフラクトースを基質とせばFeSO4の促進作用はFe2(SO4)3に比し遙に大なり.然るにマンノウロン酸及びガラクトウロン酸を基質とせばこの差を認めず. (3) 琥珀酸,乳酸及び林檎酸鹽を基質とするも差異なく唯枸櫞酸鹽の場合のみに認めらる. (4) メチル, エチル及プロピルアルコールを基質とせば兩者の差を認めず. (5) グルコース及び枸櫞酸鹽を基質とせばAlCl3添加にて促進せらるゝもNiSO4, CnSO4にては阻止せらる. (6) アスパラギン酸と琥珀酸とを基質に選びMgCl2存在にて兩者間の差はグアニル酸の場合無きもチアゾール型兩者にては差異大なり.

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