日本化學會誌
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ヌクレオチード,チアゾール型九種デヒドロゲナーゼの各種基質による作用の強弱とMg..による賦活効果(第五報)*
田所 哲太郎齋藤 恒行
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1942 年 63 巻 5 号 p. 462-464

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抄録

著者1)は酵母及胸腺ヌクレイン酸,ピリヂン・ヌクレオチード,グアニール酸及びグァノシン等5種のヌクレオチード型トヴィタミンB1, 4-メチール-5-β-ヒドロキシ・エチルチアゾール, 4-メチルチアゾール-5-カルボン酸及び4-メチル-5-β-クロロエチル,チアゾール等4種のチアゾール型合計9種のデヒドロゲナーゼを研究せり.酵素の構造中-CH2OH基の出現にて作用顯著となるもこれが-COOH基に變化して著しく減退し-CH2Clとなりて全く作用を消失す.酵素作用は基質構造と重大關係を有し,アルコールの酸に變化し六炭糖の-CH2OH基が-COOH基となるとき減退し-CHO基の-COOH基に變化する及び殆んど作用失はる.これに反し基質構造中に-CHO基を出現すれば強力となり, -CH2基に隣接する-CHOH基も好結果を與ふる如きも-CHO基により強力となれるものに-CHOH基多數入れるものにては却つて効果を減少せしむ.以上基質構造中の-CHO, -CHOH及びCOOH基に對する兩型酵素9種の態度はよく一致すれど基質中-NH2基特に六炭糖中の-NH2存在によりヌクレオチード型は感應少きもチアゾール型は感應大にして作用減退するを認む.兩型9種のデヒドロゲナーゼ作用はMg..により賦活せらる.恐らくピリヂン,プリン及びチアゾール核二重結合を有する窒素と副化合價により結合すると考へ水素運搬機構は基質中の-CHO基により促進せらると推論せり.又Al...は弱き賦活力ありFe..~Fe...の間の差異は六炭糖を基質とせば顯著にして前者によりては促進せらる.然るに有機酸にて差異を認めず.Ni..及びCn..は兩型酵素作用を阻止すと述べたり.本報告にはフマール酸の如き脱水素困難なるものは琥珀酸,林檎酸より劣り安息酸基ある馬尿酸はグリココールよりもベンゼン基を有するチロシンよりも勝り反應速度おおなり.ヘキソースの還元によるマニンツトとの間には差異無く, -CH2基1個を増加せるアミノ酸の間にも差異を認め難し.即ちグルタミン酸とアスパラギン酸又はロイジンとヴァリンとの間の如し.然るにイソヴァレリアン酸に-NH2を増加セルヴァリンにては作用劣ること醋酸のグリココールなりマンノースのグルコサミンとなる場合と同一なりとす.又ヘキゾース中作用強力なるフラクトースとマンノースとの差甚だ少きも前者がやゝ勝るが如し,更にシスとトランスとの關係にあるマレイン酸とフマール酸との間には差異なきことを認めたりと報告す.

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