抄録
末期の肝硬変や癌性腹膜炎による難治性および癌性腹水は患者のQOLを著しく低下させるため, 症状改善などの緩和を目的とした治療が主となる. 本研究では当科で施行された難治性および癌性腹水に対する腹腔-静脈シャントの成績を報告する. (対象と方法)1998年3月から2012年7月までに腹腔-静脈シャントを施行された62例を対象とした. 平均年齢62.3歳. 男性42例. 女性20例. 原疾患は肝硬変が47例, 癌性腹膜炎が15例であった. (結果)肝硬変群が癌性腹膜炎群に比して有意に生存率が高かった. 尿量, 腹囲を挿入前後で比較すると両群ともに有意な改善を認めた. また肝硬変では, Child-Pugh B群(22例)がC群(25例)に比して有意に生存率が高かった. 尿量, 腹囲を挿入前後で比較するとChild-Pugh B, C群ともに有意な改善を認めた. (結語)腹腔-静脈シャント術は予後の改善よりもQOLの改善に貢献すると考えられ, 原疾患の種類や肝硬変の進行度にかかわらず有用であると考えられた.