日本公衆衛生雑誌
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原著
日本の市町村保健師による事業化プロセスの経験とその関連要因
吉岡 京子村嶋 幸代
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2007 年 54 巻 4 号 p. 217-225

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抄録

目的 保健師は,多くの住民の問題を解決するために新規事業を開発しており,この方策は事業化と呼ばれている。本研究では,日本の保健師の事業化プロセスの経験の有無を把握し,その関連要因を検討する。
方法 2005年に合併しない1,871市区町村から374を無作為抽出し,協力の得られた305市町村に勤務する2,306人の保健師を対象とした。全国保健師長会の協力を得て,無記名自記式質問紙調査を2005年に実施した。調査項目は,自治体・所属組織の要因,保健師の個人要因,事業化プロセスの経験の有無である。事業化プロセスの経験に関連する要因をロジスティック回帰分析にて検討した。
結果 分析対象1,270人のうち,事業化の必要性を認識したことがない者は481人(37.9%),事業化の必要性を認識したがその提案をしなかった者は324人(25.5%),新規事業の提案をしたが提供には至らなかった者は66人(5.2%),新規事業が住民に提供された者は399人(31.4%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,過去に自身で事業化した経験があること,保健・医療・福祉に関する専門誌を読むこと,が新規事業を提供した経験を持つことに有意に関連していた。
結論 保健師は,自治体や職場の違いに拘らず,事業化を展開できる可能性と事業化の実践経験を積む重要性が示唆された。

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© 2007 日本公衆衛生学会
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