日本化學會誌
Online ISSN : 2185-0909
Print ISSN : 0369-4208
ラマン効果に依るメタアクリル酸メチルの重合の研究
八角 正士
著者情報
ジャーナル フリー

1942 年 63 巻 8 号 p. 988-994

詳細
抄録

メタアクリル酸メチルの單量體及び種々な段階に於ける重合體のラマン効果を觀測した.又過酸化ベンゾイルを觸媒とした重合體に就いても觀測を行つた.又單量體及最終重合體のベンゼン溶液に就いてもラマン効果を觀測した.
結果。(1) 重合體に於いては二重結合に關係する線は全く消えるか著しく強度を減じてゐる.
(2) 重合が或る程度進行して粘度が大になつてもラマン線は單量體と變らない.
(3) 中間重合體のラマン線は大體に於いて,單量體のそれよ最終重合體のそれとの單なる重なりである.
(4) 過酸化ベンゾイルを觸媒とした重合體のラマン線は無觸媒最終重合體のラマン線と殆んど一致する.
(5) 溶液に於ける重合體のラマン線は觀測されながつた.
以上の事實より次の結論が得られる.
(a) 重合はC=C結合が開く事に依り行はれる.
(b) 重合はラマン線の觀測可能な安定な中間體を生ずる事なく連鎖反應に依り行はれる.
(c) 過酸化ベンゾイルは重合反應速度を著しく増大するが重合物の構造には著しい變化を與へない.
(d) 重合體のラマン効果は溶酸中に於て觀測し難くなる.

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top