日本化學會誌
Online ISSN : 2185-0909
Print ISSN : 0369-4208
有機化合物を用ふる分析化學(第八報)
オキシム-鉛結合の異常性に就て(II)
石橋 雅義清水 英太郎
著者情報
ジャーナル フリー

1943 年 64 巻 1 号 p. 46-52

詳細
抄録

1. 代表的3種の脂肪族ケトオキシムを合成し,此等が何れも鉛と沈澱性化合物をつくらない事より鉛に對する一般脂肪族オキシムの作用の類似性を推察した
2. 代表的2種の芳香族ケトオキシムを合成し,此等が何れも鉛と沈澱性化合物をつくること及び前報の實驗例等よりしてオキシムに於て芳香族原子團がたとへ1個なりとも分子中に導入せられる時は其のオキシム類はすべて鉛と沈澱性化合體を構成するならんことを認め得た.故に鉛と沈澱體をつくるオキシム分子内には芳香族原子團の存在が必須的條件なるものゝ樣に推察せられる.
3. オキシム團の隣りに移動性の水素原子を有せざるモノオキシムの一般性として鉛2原子にオキシム2分子が結合(1:1)して鎖状化合體が構成せらるべしと云ふ石橋,舟橋の考察が今囘の實驗例にありても成立することを認めた.
4. Pb-アセトフェノンオキシム及びPb-ベンゾフェノンオキシムに於ては等しく4分子の水が保有せられることを認めた.即ち(C8H8NO)2Pb2・4H2O及び(Cl3H10NO)2・Pb2・4H2O.
5. 此等の鉛オキシムには有効なる有機性溶媒もなく,從つて所謂分子内錯鹽の通性を具備しないものと認められる.
6. 此等のオキシムは鉛に對する直接の分析試藥的價値と云ふよりも寧ろ分析化學に於て基礎をなす金屬有機化合物の本質的解明に對して極めて重要なる意義を有するものである.

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top