日本化學會誌
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有機化合物を用ふる分析化學(第九報)
オキシム鉛結合の異常性に就て(III)〔附〕放射性指示作用の適用
石橋 雅義渡部 俊郎
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1943 年 64 巻 1 号 p. 53-56

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抄録

1. オキシムと鉛との異常結合に關する著者等の繼續研究をベンゾインオキシムと鉛とに就て行つた.
2. モノオキシムに於てオキシム團の隣りの炭素原子に移動性の水素原子が結合して居る場合には,一般性としてオキシムの1分子に對して鉛2原子が結合し(1:2)環状體を構成するなるべしと云ふ著者等の提唱が今囘の實驗例にありても成立することを認めた.
3. Pb-ベンゾインオキシムに就てはRPb2H2O, RPb2. 2H2O, RPb2. 3H2Oの如く1~3分子水が保有せられるものゝ樣に認められた.
4. このオキシムを鉛の定量分析試藥として用ゆる時には沈澱體を145~150°Cにて恒量に加熱乾燥するを要する.尚ThBの有する放射性指示作用によつて本沈澱體の蒸溜水並びにアンモニヤ水に於ける溶解度を測定した.
5. このオキシムは鉛に對する直接の分析試藥的價値と云ふよりも寧ろ分析化學の重要基礎問題の一つなる金屬有機化合物の本質的解明に對して極めて貴重なる意義を有するものである.

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