日本化學雜誌
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混合塩の吸収スペクトル
酒井 馨
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1957 年 78 巻 8 号 p. 1108-1112

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抄録

一般に混合溶液申に錯塩が生成すれば,その吸収端位置が構成成分である各単塩よりも長波長部に移行することが知られている。この研究方法を混合融解塩に応用することによって,融解塩の構造特性の問題を解明し・ようとした。すなわち,本報では状態図の中間相の生じない系(NaNOg-KNO3,NaNO2--KNO3,PbC12-PbBr2,CdBr2-Cdl2,CdCl,-Cdl2,PbCl,-CdC12,ZnC12-ZnBr2系)について実験を行った結果,電導度値でも錯塩が生成しないと予想されるのに,程度の差はあるがすべて吸収端位置の長波長移行が見られた。しかし,その移行程度は申間相の存在する系*の場合よりは小さい。著者はNaNO3-KNO3,NaNO,-KNO3系についてはその原因を微結晶の再融解によると考え,ZnC12-ZnBr2系では錯塩の生成によるか微結晶の影響によると考えた。また,PbC12-PbBr2,CdBr2-Cdl2,CdC12-Cdl2,PbC12-CdCl2系はいずれも鉛とカドミウムのハロゲン化物から構成されるが,これらは常温でそれ自体が会合した錯塩で加熱と共に解離すると考えられるから,上記現象のおこる原因はこの混合塩の相k:作用による熱解離度の増大にあると考えた。

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© The Chemical Society of Japan
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