日本化學雜誌
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ポリビニルアルコール皮膜の微細構造に関するX線的研究(第1報)選択的面配向
望月 隆仁
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1959 年 80 巻 8 号 p. 834-838

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抄録

ポリビニルアルコール(PVA)水溶液をガラス板上に流し込み風乾する,一般に報告されている方法によって作製した皮膜では,光学的にもX線的にも異方性が認められる。すなわち膜面に平行な方向から見ると明瞭な複屈折が観察され,屈折率楕円体の長軸は膜面に平行である。X線回折写真にも微結晶の非等方的な配向が観察される。さらにX線デフラクトメーターを用い,(10i)と(101)の反射を分離してその回折強度を定墨的に測定した。PVA皮膜による回折強度曲線は繊維状試料の場合とまったく異なる。膜面に垂直にX線を入射させると完全なDebye環が得られ,その(10i)の強度は(101)の強度よりも大きい。膜面に平行に入射させた場合,赤道線上の強度の大きい,弧状の千渉点が見られ,(101)の強度は(10i)の強度より大きい。この結果からPVA皮膜は微結晶の繊維軸の方向が皮膜面内では面法線に関し無秩序に分布しているが,分子鎖のなす平面(ここでは(101))が膜面に平行な構造-選択的一面配向構造…をもつことが明らかになった。

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