日本化學雜誌
Online ISSN : 2185-0917
Print ISSN : 0369-5387
ISSN-L : 0369-5387
エルドマン型錯塩の合成(第4~5報) (第4報)テトラアシド・コバルト(III)酸力リウムの合成
久野 栄進
著者情報
ジャーナル フリー

1959 年 80 巻 8 号 p. 849-852

詳細
抄録

ジクロロ・ジアコ・エチレンジアミン・コバルト(III)塩化物([Co en(H20)2Cl2]Cl)とジクロロ・ジアコ・ジアンミン.コバルト(III)塩化物([Co(NH3)2(H20)2Cl2]Cl)からつぎのテトラアシド系錯塩を合成した。(1)ジカルボナト・エチレンジアミン.コバルト(III)酸カリウム(K[Co en(CO3)2]H20)。(2)ジカルボナト・ジアンミン・コバルト(III)酸カリウム(K[Co(NH3)2・(CO3)2]・H20)・(3)ジオキザラト・エチレンジアミン・1バルト(皿1)酸カリウム(K[Co en ox2]・H20)。(4)ジオキザラト・ジアンミン・コバルト(III)酸カリウム(K[Co(NH3)20x2]・H20)。これらの錯塩の水溶液の吸収スペクトルは,著者らのさきにトリカルボナト・コバルト酸カリウムから合成したいわゆる「青型」錯塩と一致した。また同上錯塩から出発し,逆反応で誘導した錯塩はすべてエルドマン型錯塩であった。この事実は,エルドマン型錯塩とテトラアシド型錯塩との間の反応過程で,アンモニアまたはエチレンジアミン分子の窒素に関してシスートランス転移が存在することを示唆するものである。また塩化ナトリウム領域での赤外吸収スペクトルは,配位した炭酸あるいはシュウ酸イオンが二座配位子として強く金属に結合しており,エチレンジアミン錯塩は相当するアンミン錯塩よりその共有結合性が高いことを示している。熱分解の実験結果もまたこのことを示している。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top