1960 年 81 巻 2 号 p. 232-236
六座配位子および五座配位子としてエチレンジアミン四酢酸をふくむコバルト (III) 錯塩の遊離酸 H[Co edta]・4H20 と H[CoedtaH(Cl)]・2H20 の赤外吸収スペクトルはそれぞれ相当する塩類のスペクトルと本質的な差異を示さない。しかしながら H[Co edta]・4H20 の加熱脱水によって得られる無水物, すなわち形式上 H[Co edta] であらわされるものは, その含水物とはいちじるしく異なった赤外吸収スベクトルを示し, とくにそのカルボキシル基に起因する吸収では五座配位錯塩 (M[Co edta H・(X)]・2H20) とまったく類似のスペクトルを与える。 このことから無水物の構造は1個の遊離カルボン酸を含む五座配位錯体 [CoedtaH]0 であろうと思われる。 H[Co edtaH(Cl)]・2H20 においては,加熱によって相当する H[Co edtaH(X)] は得られない。なお, Na[Co edta]・4H2O は反磁性を示すが, H[Co edta]・4H2O, は強い常磁性を示し, H[Coedta] はきわめて弱い常磁性を示すことがわかった。
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