日本化學雜誌
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N,O-ペプチド転移によるクルペインおよびサルミン中のオキシアミノ酸配列様式の決定
岩井 浩一
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1961 年 82 巻 8 号 p. 1088-1096

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抄録

オキシアミノ酸残基におけるペプチド結合の NO アシル転移を利用してタンパク質の特異的分解法を確立することを目的としたこの研究は,クルペインおよびサルミンについて所期の目的を達成し,さらに進んで,両プロタミン中におけるセリン残基の配列様式を定量的に決定することに成功した。すなわち,クルペインおよびサルミンに濃硫酸を 20℃ で 4 日間作用させ,オキシアミノ酸残基の N-ペプチド結合をその水酸基に転移させ,ついで形成された O-ペプチド結合(エステル結)を選択的に加水分解するため, 1) 転移プロタミンに直接 6N 塩酸を 20℃ で 16 時間作用させるか, 2) 遊離されたアミノ基を亜硝酸で脱アミノしたのち, 0.25N 炭酸水素ナトリウムを 20°~30℃ で 1 夜作用させるか,または, 3) アセチル化後 0.3N 炭酸ナトリウムを 30℃ で 4 時間作用させた。生成したペプチド混合物の C- および N- 末端アミノ酸残基の分析結果から,両プロタミン中のセリン残基(80~90% まで解明)は,ともに -Ser-Ser-, -Ala-Ser-, -Val-Ser-, および -Arg-Ser- として存在するが,これらの配列様式の割合は,たがいに異なることを見いだした。トレオニン残基(クルペイン中に少量含まれ,サルミンには不含)は転移・切断率が低く,この方法ではその配列様式を決定することができない*2

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© The Chemical Society of Japan
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