塩酸-塩化リチウム混合溶液系中の種々の金属の陰イオン交換平衡を25℃において測定した。分布係数の値から陰イオン交換平衡定数,溶液内における種々の平衡定数,溶液内錯体の存在比を求める式を導入した。とくにテトラクロロ錯陰イオンが酸生成の性質を持つことに基礎をおいて考察を進めた。本報においては,水銀(II)について実験を行なった。水銀(II)の陰イオン交換樹脂に対する分布係数は,一般に塩素イオン濃度および水素イオン濃度が大なるほど低い値を示す。塩化物濃度4mol/l以上の場合における結果について,さきの理論式によって平衡定数を計算した。塩素イオン濃度10mol/lにおいては,HgCl42-およびHHgCl4-の酸生成定数はそれぞれ5.5および0.9,またイオン交換平衡定数はそれぞれ3.4×105および1.8×103となった。別に塩化物水溶液-メチルイソブチルケトン系における水銀(II)の分配係数の値を求め,陰イオン交換の分布係数の値と比較して,水銀(II)のテトラクロロ錯イオンの酸生成が平衡に寄与することを示した。
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