日本化學雜誌
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沈殿表面のイオンと溶液中のイオンの交換
林 謙次郎
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1962 年 83 巻 10 号 p. 1068-1074,A69

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抄録

RI交換法による沈殿の表面積測定は,沈殿の表面にあるイオンと溶液中のイオンとの交換反応を利用している。この方法の適用に際し,固体内拡散や沈殿の再結晶過程は無視できるとしている。しかしこのような仮定にはいくつかの疑問がある。そこで著者はPittsの理論式やその他の研究結果を用いてPbSO4-SO42-,PbSO4-Pb+,AgX-Ag+交換の律速段階を調べた。一般にAgX-Ag+,PbSO4-SO42-および希薄酸中でのPbSO4-Pb2+の諸交換は再結晶過程によって律速されると考えられる。しかし硫酸中でのPbSO4-Pb2+交換やAgC1-Ag+交換は,固体内拡散が律速段階であるとして求めた結果とよく一致する。0.258~3N硝酸または2.87N過塩素酸中でのPbSO4-Pb2+交換は固一液界面反応過程が律速段階であると考えられる。
以上いずれの場合にも沈殿表面のイオンと溶液申のイオンとの交換平衡を求めることはできなかった。それゆえ,RI交換法で求めた沈殿の比表面積にはかなりの疑問がある。

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