日本化學雜誌
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種々の溶媒および混合溶媒中のポリ-γ-ベンジル-L-グルタメート分子の会合状態の電気複屈折による研究
渡辺 啓
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1965 年 86 巻 2 号 p. 179-185

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抄録

単一ク形成パルスによる電気複屈折の方法をポリ-γ-ベンジル-L-クルタメート(PBLG)のベンセン,ジオキサン,クロロホルム,二塩化エチレン(EDC)溶液,およびこれらのジメチルホルムアミド(DMF)あるいはジクロル酢酸(DCA)との混合溶媒の溶液に適用し,比Kerr定数と複屈折消滅の緩和時間の測定からPBLG分子の溶解状態を考察した。
その結果,ベンゼンおよびジオキサンにおけるPBLG分子のいちじるしい会合はside-by-sideで逆平行,クロロホルムおよびEDCにおけろPBLG分子の分子の会合は線状でhead-to-tailであることが推定された。
これらの溶液に少量(1~5 vol%)のDMFあるいはDCAを添加するとPBLG分子の会合は解けるが,ベンゼンおよびジオキサン溶液では若干の会合が残り,これらの会合はDMFあるいはDCAを40~60 vol%加えるま完全には解けない。
また,PBLGのEDGおよびDMF溶液にエチルアルコールを加えて,ついにPBLGが析出するにいたるまでのPBLG分子の溶解状態の変化を考察した。DMF溶液にエチルアルコールを加えていく場合,アルコールが30~36 vol%で比Kerr定数と緩和時間はいずれもアルコールの比率の増大とともに減少していき,分子量の大きいPBLG分子からside-by-sideで逆平行の会合をしていくことが推定された。これとは逆に, EDC溶液にエチルアルコールを加えていく場合,アルコールが34~43 vol%で比Kerr定数と緩和時間はともに急激に増大し,このときはPBLG分子がhead-to-tailの会合で析出することが推定された。
クロロホルム溶液にDCAを添加したときは,少量(約1 vol%)のDCAの添加でPBLG分子のC末端のペブチド基のプロトン化によると思われる比Kerr定数のいちじるしい低下が見られた。他方,ベンゼンやジオキサン溶液ではDCA 50 vol%付近から比Kerr定数は減少していく。またこれらの混合溶媒系でも溶媒組成および温度によるヘリックスーコイル転移が観測された。

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