日本化學雜誌
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高分子の単結晶
平井 西夫物延 一男
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1965 年 86 巻 5 号 p. 460-472

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抄録

ポリエチレンのような長鎖状分子も単結晶になり得る。著者らは多数の高分子の単結晶をつくり,それらの構造と性質とを研究した。溶液から得られる高分子単結晶は薄板状であり,その中で分子鎖が板面に垂直におりたたまれて配列する。最近,溶融結晶化ポリマーもまた同じような特徴的な層板状構造をとることが判明した。この折りたたみ鎖構造の概念は房状ミセルモデルに基づいた従来の構造概念といちじるしく異なっている。それゆえ,高分子単結晶の研究は結晶性高分子のレオロジー的挙動を分子論的に解釈することにきわめて重要な関係を有する。本論文はこれまで著者らが研究してきた結果をつぎのようなテーマでまとあたものである。
1) 単結晶のつくり方。2) 単結晶の形態と構造。この項ではα型ナイロン66の単結晶ならびに単結晶中のラセン転位の発生機構が主として述べられている。3) 単結晶中の分子鎖の構造。著者らは分子鎖の折りたたみ周期が100Åであるということがどの程度まで成立するかという問題と分子鎖が単結晶層板面につねに垂直であるかどうかという問題を明らかにしようと試みた。4) 多形。ポリアミド類ならびにアミロースの異なった結晶変態をもった単結晶がつくられて研究された。5) 分枝ポリエチレンの単結晶。著者らはこのポリマーの分枝基がどのように結晶中に入るかということに注意を向けた。この問題は結晶性共重合物の同形に関係をもっている。6) 単結晶の延伸。7) 単結晶の熱処理。これら二つのテーマは合成繊維製造の過程に関連して,はなはだ興味深くまた非常に重要である。8) 巨大単結晶の作製。9) 合成ポリペプタイドの単結晶。著者らは折りたたみ鎖の概念がタンパク質にあてはまるかどうか知るためにポリ-γ-ベンジルグルタメートおよびポリ-γ-メチルグルタメートの溶液から結晶化した結晶の構造を研究した。

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