日本化學雜誌
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タンパク質の高次構造の可変性
完全に糸まり状とした構造から生物活性のある構造への復元
伊勢村 寿三
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1965 年 86 巻 5 号 p. 447-459

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抄録

タンパク質の高次構造は環境に応じ可変であるが,生理的環境ではそれぞれのタンパク質は特有の高次構造をもっている。これが各タンパク質のアミノ酸の結合順序によって規定され,またこれがそれぞれのタンパク質の示す生物活性とも対応することを明らかにする目的で行なわれた一連の研究の結果について述べる。試斜にはタカアミラーゼAを主として用い,枯草茵α-アミラーゼ,および卵白リゾチームをもあわせ用いた。
8mol/l尿素溶液で完全に変性し,なおジスルフィド結合をもっているタンパク質ではメルカプトエタノールのような還元剤で全部それらを還元的に切断して線状としたものから,変性剤,還元剤を除き,還元されたタンパク質を空気で再酸化するとこれは未変性のものと同一のものに復元する。すなわちタンパク質の結晶形,流体力学的諸性質,旋光性など高次構造に関係する諸定数が完全に未変性のタンパク質のそれらと等しい状態に復元するほか酵素活性,免疫活性などの生物学的な活性も生のものと区別できない状態にもどすことができる。その結果,少なくともこれらのタンパク質の高次構造はポリペプチド鎖中のアミノ酸結合順序によって規定されるものであることが明らかとなった。タカアミラーゼAにおけるカルシウムのような活性に本質的なCofactorと高次構造との関係,ジスルフィド結合の部分形成と生物活性との関連などについても述べる。

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