既報
1)において明らかなように,水素による酸化鉄の還元は2段階で進行する。その第1段階はヘマタイトからマグネタイトになる過程であり,還元速度は水素圧力の1次に比例した。この初期速度と試料表面との関係をさらに明らかにするため,表面の一部を窒素で被覆して還元を行ないその影響を調べた。その結果,見かけの還元速度は
r=k'PH
で表わされる。ただしk'は見かけの還元速度定数であり,窒素被覆率θ
Nとの間にはつぎの関係がある。
θ
N≦θm k'=k exp(-aθ
N)
Nθ>θm k'=k (exp(-aθm))-exp(-b(θ
N-θM)))
ただしkは清浄試料面での還元速度定数,aおよびbは窒素の被覆率に対する還元反応の活性化エネルギーの増加割合を示す定数,θmは窒素の被覆率θ
Nに対して還元反応の活性化エネルギーの増加割合aがbに変わる被覆率を示す。
このようにθ
Nがθmを境いとして,k'に与える影響の異なることから試料表面には活性の異なる部分が存在すると考えられる。さらにθm, a, bは温度により変化すること,θ
Nの大きいとき還元速度は水素分圧の1次から少しずれることなどから,θ
Nは反応中に変化するものと考えられる。
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