日本化學雜誌
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酸化鉄の水素による還元反応に与える吸着窒素の影響(II)
矢野 元威井本 立也
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1965 年 86 巻 7 号 p. 677-681

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抄録

酸化鉄粉末の水素による還元反応は2段階で進行する。水素圧力100-300mmHg,反応温度300°-400°Cのもとでその第1段の還元反応速度は試料の表面積と水素圧力の1次にともに比例することをさきに述べた1)。そこで試料表面が均一な性質を持つかどうかを調べるため,窒素を用いて試料表面の一部を被覆し還元反応を行なった2)。その結果還元反応速度は窒素で被覆されていない部分の表面積と水素圧力の積に比例する。さらに吸着窒素が二座反応で脱離し,その結果生じた窒素のない裸の表面も還元反応に関与するものとすると,反応系の圧力減少速度は,-dP/dt=k(-θN)PH-kdθN2ただしk:還元反応速度定数kd:吸着窒素の脱離速度定数θN:反応温度での試料全表積に対する窒素の被覆率PH:水素圧力P:全圧力で表わされる。
ここで得られた還元反応速度定数kから求めた還元反応の活性化エネルギーは300°-400°Cの範囲で19.4 kcal/molwであり,既報1)の第1段の還元反応の活性化エネルギーとよく一致している。吸着窒素の脱離速度定数kdはθNが0.2-0.4%の間で変化し表面の不均一性を示す。
θNの小さい場合と大きい場合の吸着窒素の脱離反応の活性化エネギーはそれぞれ26.5, 23.5 kcal/molであり,余り差異はないが,ヒン度因子は9.12×1012sec-1,1.69×1010sec-1と非常に異なっている。また本試料は電子顕微鏡写真によると0.06μ程度の粒子の凝集塊からできていることが明らかになった。これらのことから活性の違いは凝集塊表面と粒子間隙の空孔内面との違いであると推論される。

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