日本化學雜誌
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14 MeV中性子による鉄鋼中のケイ素の放射化分析
日下 譲辻治 雄
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1965 年 86 巻 7 号 p. 733-736

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抄録

14 MeV中性子により,ケイ素は28Si(n, p)28A1反応を生じ,その反応を用いる放射化分析の分析感度は比較的高い。本報は諸種の鉄鋼試料につき,この反応に基づくケイ素の非破壊分析を試みた研究結果である。
T-d反応を利用する中性子発生器を用い,試料を5分間中性子照射する。試料照射位置での中性子束は2~7×106n・cm-2・sec-1であった。試料としては諸種の鉄鋼切削片の一定量(6~10g)を用いた。標準試料には純鉄粉にケイ素を適当量混合したものの一定量(5g)を用いた。
生成放射能は1.75×2.00in井戸型NaIシンチレーターを用い,マルチチャネル波高分析器により測定した。得られたγ線スペクトルの1.78MeV光電ピークからケイ素を定量した。その光電ピークには56Fe(n, p)56Mn反応による生成放射能が少し重なるので,その寄与分を補正する方法が検討された。
中性子束1.0×107n・cm-2・sec;-1において,本法によるケイ素の定量限界は約5mgであり, 10g試料を用いて0.05%程度である。
定量妨害元素としてはリンがあるが,試料中のケイ素存在量の約10%以下のリンの共存は本法の妨害にはならない。
本法により比較的短時間内で諸種鉄鋼試料中の微量ケイ素が非破壊的に定量分析できる。

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