1968 年 89 巻 11 号 p. 1032-1036
酸化亜鉛によるパラ水素転換反応および軽0重水素平衡化反応を室温~-196℃ の温度域,30~500mmHgの圧範囲で速度論的研究を行なった。
低温域では転換反応は起こるが平衡化反応は起こらなかった。転換反応の活性化エネルギーは-0.16kcal/mo1,圧次数は0.34~0.36であった。
室温付近では両反応とも起こり,転換反応で活性化エネルギーは2.9kcal/mol,圧次数は0.64~0.80,平衡化反応で5.9kcal/nol,1.0とえられた。これら室温付近での両反応の速度論的結果の違いは,単に水素の同位元素効果だけで説明することはできない。酸素,亜酸化窒素,水を酸化亜鉛に吸着させたのち,および300℃ で水素還元したあとでは両反応速度変化はたがいに独立であった。この事実は両反応の活性点がたがいに異なることを強く示唆する。
酸化亜鉛にアルミニウムをドーピングすると室温付近での両反応とも活性化エネルギーが減少し,リチウムドーピングでは両反応とも起こらなかった。このことは両反応が電導電子濃度に依存することを示す。
低温域での転換反応が従来からいわれているような物理機構で進行することを確かめた。平衡化反応は解離吸着水素に水素分子が反応するいわゆるRideal機構で説明できる。室温付近で見いだされた転換反応については,その機構および活性点につき考察した。
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