1968 年 89 巻 12 号 p. 1248-1250
光照射によりω-フェノキシアセトフェノンからアセトフェノンとフェノールとが生成する光エ一テル開裂反応の過程を追求するために,(1)ω-フェノキシ-β-アセトナフトン〔D〕の光分解,(2)ω-フェノキシアセトフェノン〔A〕の光分解におけるナフタリン効果,の二点に関して検討した。
ケトソ〔D〕は最低励起三重項π→π* をもつと考えられるにもかかわらず,ケトン〔A〕と同様にいちじるしく分解した。一方,ナフタリン濃度を種々に変えてもケトン〔A〕の分解速度はほとんど一定であった。すなわち,ケトン〔A〕の光分解におけるナフタリン効果はまったく認められなかった。また,1,3-ペンタジエン効果も同様に認められなかった。
こうして本反応がペンゾフェノンの光還元反応と異なり,ケチルラジカル〔A-H〕の生成は本反応においては必要でないことは明白である。さらに,この光開裂反応はn→π* 三重項状態〔A* T〕でなく一重項状態〔A* S〕から進行するものと思われる。
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