日本化學雜誌
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アミノ化合物の分子内回転
坪井 正道平川 暁子玉懸 敬悦
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1968 年 89 巻 9 号 p. 821-830

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抄録

メチルアミン(CH3NH2), メチルアミン-d2(CH3ND3), メチル-d-アミン(CH2DNH2), エチルアミン(CH3CH2NH2), イソプロピルアミン((CH3)2CHNH2), t-ブチルアミン((CH3)3CNH2)の気体の遠赤外吸収スペクトルを測定し, C-N 軸ねじれ振動吸収帯の位置ならびに微細構造を観測した。CH3NH2およびCH2DNH2 の二分子の内部回転については詳細な理論的取り扱いを行ない, 他の分子に対してはそれらの結果を適宜に応用した。その結果, 判明した点はつぎのとおりである。
CH3NH2のメチル基の慣性モーメント (対称軸のまわり) は (5.273±0.020) ×10-40g・cm2, 内部回転のポテンシャル定数は, H3=683.2±1.2cm-1, H6=-2.0±1.5cm-1。CH3ND2 の内部回転のポテンシャル定数は, H3=671.6cm-1, H6=O0 CH2DNH2 分子のねじれ振動第一励起状態のエネルギー準位はトランス形のものとゴーシュ形のものとに画然とわかれでいて, しかもそのおのおのは分子全体の回転量子数 K にほとんど依存しない。これは内部回転の実効慣性モーメントが内部回転角によって変化することを考慮しただけでは説明できない。むしろ他の振動とねじれ振動とのカップリソグの様相がトランス形分子とゴーシュ形分子とで違うことが主因であると考えられる。なお, 二つのゴーシュ形の間の相互作用によってねじれ振動第一励起エネルギー準位は2.8cm-1分離している。エチルアミンおよびイソプロピルアミンの内部回転エネルギー準位は, いずれもやはりトランス形のものとゴーシュ形のものとにわかれている。エチルアミンではゴーシュ形の方が振動数は低く, ゴーシュ・ゴーシュ相互作用による分離は 2cm-1, その間のポテンシャル障壁の高さは 560±50cm-1である。t-プチルアミンの3回対称ポテンシャルの山の高さは826cm-1 と見積もられた。

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