日本化學雜誌
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テンゲル石の組成
長島 弘三脇田 久伸
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1968 年 89 巻 9 号 p. 856-859

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抄録

テンゲル石と称される銘物は, 含水炭酸イットリウムの希産鉱物であって, 古くスエーデン Ytterby で発見されたものであるが, その性質などはあまりわかっていない。組成に関しても, アメリカ Texas 州 Llano 産の試料の分析値は著量のベリリウムとイットリウムを示し, 本邦福島県川俣町水晶山産の試料の分析値は著量のカルシウムとイットリウムを示している。後者の分析値から飯盛はテンゲル石の組成式としてイットリウムとカルシウムの含水塩基性複炭酸塩 Y3Ca(OH)3(CO3)4・3H20(?)という式を提案した。
組成を調べるため, トリクロル酢酸イットリウムの水溶液から沈殿させ, 母液とともに熟成させる方法により含水炭酸イットリウムを合成した。沈殿させた炭酸塩のX線粉末回折値は水晶山産およびノルウェー Iveland 産 (ASTM, 16-698) の回折値とよく一致した。水晶山産の試料と, 合成物の DTA,TGA,IR 吸収はよく一致し, 両者が同一物質であることが確かめられた。合成物の分析値からモル比は Y203:CO2:H20=1.00:2.90:2.56(平均)となった。この比は正炭酸塩にきわめて近い。以上の結果からつぎのことが結論される。(1)テンゲル石は含水炭酸イットリウムと同じ構造を有する。(2)テンゲル石は含水炭酸イットリウムに近い組成を有する。

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