日本化學雜誌
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トリス(1,10-フェナントロリン)鉄(II)キレート陽イオンによるニッケルの溶媒抽出吸光光度定量法
山本 勇麓熊丸 尚宏林 康久三浦 進木村 繁和
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1971 年 92 巻 1 号 p. 64-68

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抄録

水溶液中に存在する微量のニッケルはシアン化物イオンが共存すればシアノ錯陰イオンとなり,適量のトリス(1,10-フェナントロリン)鉄(II)キレート陽イオンとともに選択的にニトロベンゼンに抽出され,この有機相の呈色の強度は水相中のニッケル濃度に比例することを見いだした。この原理に基づくニッケルの新しい抽出吸光光度定量法を研究した。
抽出の諸条件を検討した結果,シアン化物イオンおよびトリス(1,10-フェナントロリン)鉄(II)キレート陽イオンの濃度をそれぞれ1.6×10-4mol/lおよび8.0×10-4mol/l以上にたもち, pH6~8で抽出すればよいことがわかった。水相中のニッケルの濃度が23.5μg/25ml以下の範囲で抽出有機相の吸収極大波長(516mμ)における吸光度とニッケル濃度との間には直線関係が成立した。本法の感度は0.0027μgNi/cm2でありジメチルグリオキシム法(0.0042μgNi/cm2)より高く呈色も安定であり,精度は平均吸光度0.349に対して0.40%であった。本法を鉄鋼中のニッケルの定量に応用して良好な結果を得た。

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© The Chemical Society of Japan
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