日本化學雜誌
Online ISSN : 2185-0917
Print ISSN : 0369-5387
ISSN-L : 0369-5387
有機塩基を結合したtrans-ビス(1, 2-ジオキシマト)コバルト(III)錯体におけるシス-電子効果の伝達-還元電位
山野 幸男増田 勲新良 宏一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1971 年 92 巻 8 号 p. 707-710

詳細
抄録

[Co(DH)2B2]+型錯体(DH=1, 2-ジオキシマトモノアニオシ, B=ピリジン誘導体,およびアニリン誘導体)のポーラログラフ半波電位E1/2(CoIII→CoII)は,軸配位子がピリジン誘導体の場合は,アニリン誘導体にくらべて,より正側に移動し,かつ置換基による影響は大きい。また,配位ジオキシムがdmgH<nioxH<bzdH<frdHと電子受容性が増すほど,半波電位は正側に移動している。また,これら錯体のプロトン解離指数pkaE1/2(CoIII→CoII)との関係では,軸配位子の塩基性が減少するほど,また配位ジオキシムの電子受容性が増大するほど,中心コバルトイオンは還元されやすくなり,オキシムのプロトン解離も起こりやすくなっている。しかし,軸配位子がピリジン誘導体の場合は,アニリン誘導体にくらべて,中心コバルトイオンの電子受容性はそれほど変わらないのに,プロトン解離は非常に起こりやすくなっている。また配位ジオキシムの電子受容性が増すほど,軸配位子ピリジンの効果は大きくなっている。
これらの結果から,軸配位子ピリジン誘導体の平面ジオキシムキレートへの電子効果は,σ-結合を通じての他に, pπ(py)-dπ(Co)-pπ(DH)相互作用を通じても伝達されるものと考察した。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top