1971 年 92 巻 8 号 p. 707-710
[Co(DH)2B2]+型錯体(DH=1, 2-ジオキシマトモノアニオシ, B=ピリジン誘導体,およびアニリン誘導体)のポーラログラフ半波電位E1/2(CoIII→CoII)は,軸配位子がピリジン誘導体の場合は,アニリン誘導体にくらべて,より正側に移動し,かつ置換基による影響は大きい。また,配位ジオキシムがdmgH<nioxH<bzdH<frdHと電子受容性が増すほど,半波電位は正側に移動している。また,これら錯体のプロトン解離指数pkaとE1/2(CoIII→CoII)との関係では,軸配位子の塩基性が減少するほど,また配位ジオキシムの電子受容性が増大するほど,中心コバルトイオンは還元されやすくなり,オキシムのプロトン解離も起こりやすくなっている。しかし,軸配位子がピリジン誘導体の場合は,アニリン誘導体にくらべて,中心コバルトイオンの電子受容性はそれほど変わらないのに,プロトン解離は非常に起こりやすくなっている。また配位ジオキシムの電子受容性が増すほど,軸配位子ピリジンの効果は大きくなっている。
これらの結果から,軸配位子ピリジン誘導体の平面ジオキシムキレートへの電子効果は,σ-結合を通じての他に, pπ(py)-dπ(Co)-pπ(DH)相互作用を通じても伝達されるものと考察した。
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