1973 年 1973 巻 4 号 p. 842-847
非イオン界面活性剤水溶液の温度による相変化がアクリル酸エステルの乳化重合安定性におよぼす影響を検討した。非イオン界面活性剤を用いてアクリル酸エステルを乳化重合すると,重合温度がある温度以上では重合安定性は悪くなり,また非イオン界面活性剤のオキシエチレン付加モル数(P)がある数より小さくなると重合安定性は悪くなる。しかし重合温度を低くすれば,従来用いられなかった低いPのポリオキシエチレソノニルフェニルエーテルを用いても,安定なポリマーエマルジョンは得られることがわかった。これらの現象は非イオン界面活性剤水溶液の相変化により説明することができる。非イオン界面活性剤の示す,その界面活性剤水溶液にアクリル酸エステルモノマーを添加すると低下し,モノマー濃度の嚥下にしたがって低下する。しかし,ある濃度以上になると,曇点はもはや低下しなくなる。このときの温度を「モノマー飽和曇点」とするが,このモノマー飽和曇点は,非イオン界面活性剤のPが大きいほど高い。モノマーを含む非イオン界面活性剤水溶液は,曇点より低い温度では曇点以上ではW/0エマルジョンであり,したがって,重合がモノマー飽和曇点より低い温度で行なわれれば安定なポリマーエマルジ灘ンが得られ,モノマー飽和曇点曲線は重合安定性に関し,安定領域と不安定領域の境界を示す。
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