日本化学会誌(化学と工業化学)
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芳香族アミン-過酸化水素系における接触作用を利用したマンガン(II)のキレート滴定法
阿部 重喜高橋 邦雄松尾 力
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1973 年 1973 巻 5 号 p. 963-967

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抄録

芳香族アミン過酸化水素系における金属イオンの接触作用について基礎的な検討を行ない,炭酸塩溶液中におけるマンガン(II)の接触反応をキレート滴定の終点指示系とするマンガンの定量法を確立した。
マンガン(III)はフェネチジソ,Pアニシジン, oジアニシジンなど一連の芳香族アミン類の酸化に対して,炭酸アンモニウム(pH 9.3)および炭酸水素ナトリウム溶液(pH 8.4)中で顕著な接触作用を示し,最適の炭酸塩濃度は4 mol 1程度であった。 pH 12付近の炭酸ナトリウム溶液中ではマンガン(II)による接触作用はまったく見られず,本接触反応系では炭酸塩濃度とともに溶液のpHが重要な因子であった。マンガンのほかにコバルト(II)が炭酸水素ナトリウム,銅(II)が炭酸アンモニウム溶液中で弱い接触作用を示した。
マンガンの滴定条件はつぎのとおりである。既知濃度のEDTAを含む。4 mol/1炭酸塩溶液50 mlに指示系として0.2%Pフェネチジン(あるいはPアニシジン)3 ml,3%過酸化水素1mlを加え,マンガン(II)溶液で滴定する。滴定終点ではアミンの接触酸化がすみやかに進行し,溶液は濃い燈色を呈する。滴定結果は通常の金属指示薬を用いる方法とよく一致していた。逆滴定法によって亜鉛,カドミウム,水銀および鉛の定量ができる。接触指示系として0フェネチジン,0ジアニシジン,0トリジンなども適用できる。

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